変貌する『瀋陽イメージ』 ――「煤煙」の街から「花博」の街へ

|中国

「瀋陽」と聞いて、どんなイメージを連想するだろうか?

旧「満州」の奉天、満州事変、国有企業、鉄西区の煤煙、大量の失業者・・・。数年前までは、どちらかと言うと、暗い、煤けたイメージの方が多く浮かんだことだろう。ところが近年、瀋陽市は従来の「瀋陽イメージ」を払拭して投資を呼び込もうと、「イメージアップ大作戦」を展開中だ。さらに「東北振興政策」という国家プランの後ろ盾を得て、「瀋陽イメージ」は大きく変わりつつある。

まず、「瀋陽イメージ」を代表する、国有企業が集中する旧工業基地「鉄西区」(瀋陽南駅の西側一帯)を歩くと、その変容ぶりに驚かされる。

鉄西区の設定は、満鉄が1918年(大正7年)末、将来の工業用地として鉄道西地区において農家からの土地買収に着手したことに始まる。満州事変後、同地区の拡大計画が作成され、その後は日本や「満州」の大・中企業の進出が続き、東北地方随一の工業地域を形成した。

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<写真>かつての鉄西区。国有企業から排出される煤煙がひどかった。

第二次世界大戦後は、中国の「第一次5カ年計画」の重点投資を受けて重工業が復活。新中国建設初期には、中国経済全体の重化学工業化を進めるために重要な役割を果たした。中でも大型国有企業37社が並ぶ「北二路」は350の「中国初」を製造し、計画経済時代の花形通りだった。しかし、改革開放後は市場経済化の流れから完全に取り残され、2001年には企業資産の負債率が90%以上に達し、「欠損通り」、「レイオフ者(一時帰休者)通り」の汚名を喫した。鉄西区の多くの国有企業で設備の老朽化、経済改革の遅れ、経営悪化などの問題が深刻となり、大量の余剰人員や離退職者を抱えて経営不振に喘ぐ様子は「東北現象」と呼ばれた。2002年、鉄西区の大中型国有企業232社の給与支給遅滞などによる債務不履行額は27億元にのぼったという。

1986年~2002年の16年間にわたり、中央政府は合計350億人民元の資金を投入し、鉄西区の再興をはかったが、根本となる国有企業の体制改革にはメスが入らず、大きな効果はあがらなかった。こうした状況下で、2003年に国家プラン「東北振興政策」が打ち出された。中国が今後も持続可能な経済発展を続けるには、地域格差解消や経済体制移行という課題を解決する必要がある。特に、国有企業比率が高く、計画経済時代の影響からなかなか脱しきれない東北地方の経済・社会改革は待ったなしの重要課題だ。

鉄西区では2002年夏から2年越しで、国有企業の郊外開発区(瀋陽経済技術開発区)への移転戦略を実施した。鉄西区は瀋陽市中心部にあり、工業用地としての地価は安い。この工業用地を商業用地や住宅用地として転売すれば、地価があがり、売却額で郊外開発区に新工場を建設したり、設備更新をしたり、リストラ人員に対する経済補償金も捻出することができる。さらには瀋陽市の大気汚染対策にも役立つ。こうして、2004年末までに大中型国有企業130社を郊外開発区に移転。現在は、この郊外開発区ともとの鉄西区をあわせて「鉄西新区」と銘打っている。現在、従来の鉄西区には、香港や温州、浙江などの南方資本が建設した自動車ディーラーやマンション、テナントビルが立ち並び、かつての鉄西区のイメージは感じられない。

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この1年半、現地で瀋陽の変化を見てきたが、「東北振興政策」の波及効果により、多くの分野で改革を一気に進め、「瀋陽イメージ」を大きく変貌しようという意気込みが感じられる。紙幅の都合により、ここで詳細を報告することは控えるが、瀋陽市内の都市再開発、高速道路網建設や瀋陽地下鉄建設をはじめとする交通インフラ整備も一気に進んでいる。

そして来年5月には、従来の「瀋陽イメージ」からは想像すらできなかった「2006中国瀋陽世界園芸博覧会」(国際級花博)が開催される。これに先立ち、瀋陽市は2004年に「国家環境保護都市」、2005年は「国家森林都市」の称号を着々と獲得している。かつての「煤煙の街」のイメージを拭い去るクライマックス「瀋陽花博」で、新たな「瀋陽イメージ」を世界に向けてアピールしようとしたたかに狙っている。

先日、瀋陽花博の開催予定地(瀋陽市北東部の棋盤山国際風景旅遊開発区)を見学した。半年間の会期中、3,500種のバラが咲き乱れる、建築面積7,000平方メートルの巨大温室「バラ園」は、瀋陽市の花「バラ」をテーマに設計したもので、新たな「瀋陽イメージ」をPRする上で象徴的だ。また、世界各国や中国各地方のテーマ庭園の建設も急ピッチで進んでいる。友好都市・札幌市などが出資する日本庭園もある。

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<写真>花博のポスター(左)と建設が進む花博会場のテーマパーク(右)

瀋陽花博準備事務局の広報担当者は、「2006年、瀋陽花博が開催されることは、第十一次5カ年計画のスタート年にふさわしく、東北振興政策にまた一つ新たな彩りを添えるだろう。『生態環境や自然環境の改善に努力する瀋陽』や『成長する瀋陽経済』を世界に向かってPRする絶好のチャンスだ」と力強く語った。

以上