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  • 瀋陽に新中国成立後初めての外国メディア支局がオープン ―中国東北地方と日本情報交流面でも「対外開放」促進を―

瀋陽に新中国成立後初めての外国メディア支局がオープン ―中国東北地方と日本情報交流面でも「対外開放」促進を―

|中国

6月に入って二度、日本の新聞社の瀋陽支局開設パーティーに出席した。すでに報道等でご存知かと思うが、朝日新聞社が3月15日に、読売新聞社が4月1日に、中国東北地方の遼寧省瀋陽市に支局を開設した。

中国外交部によると、瀋陽での外国報道機関の支局開設は、新中国設立以後初めてだという。日本のメディア2社が相次いで支局を開設した後、韓国メディアも支局開設や駐在員派遣の準備を進めている。中国東北地方は今後、日本との経済的往来が密接になると期待される地域であり、東北アジアの要衝である。また、瀋陽には日本、米国、韓国、ロシア、北朝鮮の総領事館が同じ一角にあり、これに中国を加えると「瀋陽で六カ国協議が開催できる」と時々冗談を言いあっている。

朝日、読売のパーティーでは、外交部の記者会見で報道官として活躍中の劉建超・新聞司長が出席し、「日本のメディアを通じて中国東北地方の情報がより多く日本社会に伝わるよう期待している」と挨拶した。

確かに、瀋陽支局開設から中国東北地方に関する話題が両紙に掲載される機会が増えた。支局開設に合わせて、朝日新聞は3月14日付紙面で瀋陽特集を掲載。読売新聞は5月9日付紙面から東北3省の5都市をクローズアップして特集した。その後も「満州」に縁の話題、経済成長する瀋陽の姿、東北振興政策関連の話題などを伝えている。かつてこの地に暮らした方々などを中心に、日本から思わぬ反響が届くこともあるそうだ。

瀋陽に暮らす数少ない日本人としては、やはり嬉しい。瀋陽に赴任して以来、友人や親戚たちに「瀋陽ってどこ?あぁ昔『奉天』だったところね」と度々言われた。旧「満州」時代から半世紀以上を経て、大きく変化する中国東北の今をぜひ日本の人たちに知って欲しいと思う。

これまで中国東北地方の話題が日本のメディアで取り上げられる割合は少なかった。「瀋陽」や「東北」といってイメージされるのは、かつて「満州国」だった地域、2002年の瀋陽総領事館事件、不振の国有企業や大量の失業者などだろうか。明るいイメージを思い浮かべる日本人はあまり多くはないかもしれない。半世紀もの間、常駐日本人記者がいなかったことも一因だろうけれど。

「満州国」時代には、中国東北地方には最大時で155万人の日本人が暮らしていたといわれる。朝日新聞社の古谷浩一・瀋陽支局長がこんな話を教えてくれた。「満州事変が起きた1931年の12月には『満州』には朝日新聞記者が38人もいた。また、1931年の11月だけで『満州』を含む中国で、朝日新聞は号外を50回も出していたんですよ」。

半世紀ぶりに瀋陽に駐在する外国人記者として、朝日、読売の両記者には、ぜひ中国東北地方の今を、また、かつて「満州国」だったこの地とは何だったのかということも含めて伝えていただきたいと思う。今年6月末には、遼寧省胡蘆島市で日本人の大陸引き上げ開始60周年の記念式典が開催された。また、今年は満州事変勃発75周年、満鉄設立100周年の区切りの年でもある。

一方で、中国東北地方にも望むことがある。

ぜひ、情報交流面でも「対外開放」を押し進めて欲しい。もっと上手にメディアを活用し、また、一般向けにも情報公開サービスを充実させることで、東北地方自身のチャンスも広がるはずだ。まずは知名度とイメージのアップをはかること、投資者が必要とする経済情報を入手しやすいシステムをつくることが必要だと感じる。私自身も日々経験していることだが、東北地方の政府機関の情報提供や窓口対応がもっと柔軟に、サービス精神のあるもの(せめて宣伝上手に)に変われないものかと、ため息が出ることがある。(特に「直接投資」をしないもの書きに対する対応は冷たい……)

現在、中国とくに東北地方では「対外開放拡大」や「政府機能の転換」を提唱しているが、実際には、スローガンと実情とがまだかけ離れている。「指導層のスローガンがなかなか基層の実務担当者まで浸透しておらず、実際の手続きで苦労することが多い」(某日系企業)との声も聞く。経済データの提供一つをとっても、なかなかスムーズにことが運ばない場合が多い。外部に資料やデータを出すには上司の審査・批准が必要だと言われ、長い間待たされたり、断られたり。東北振興政策の進捗状況に関してヒアリングをしたいと打診しても、政府部門や国有企業は難色を示すケースが少なくない。比べるのは悪いかもしれないが、かつて中国南方の某沿海地域に滞在した際には、これほど四角四面な印象は感じなかった。

前出の古谷支局長も同様な印象を感じているようだ。東北地方政府は半世紀にわたり、外国メディアに触れてこなかったこと、西側ジャーナリズムの価値観に慣れていないこともあって、今のところ、外国メディアをうまく活用できていない。マイナス報道されることを恐れ、プラス面も大きいということに自信が持てないでいる。(事なかれ主義?)。東北地方で取材する際に、結構苦労があるようだ。

中央政府が外国メディアに瀋陽支局開設の許可を出した(対外開放した)ということは、まさに、劉建超司長の挨拶のとおり。東北地方の変貌ぶりや投資環境の改善状況、東北振興政策の進捗状況を日本社会に発信するチャンスだと捉えたからだ。はっきり言って、東北地方は日本企業の投資先としては、(大連を除くと)まだまだ知名度が低い。仮に外国メディアの東北報道が10本あれば、マイナス報道は2本ぐらい、逆に宣伝のチャンスは8本あると発想転換して欲しい。

また、情報発信に力を入れると同時に、日本企業とのコミュニケーションをはかる機会を積極的につくって欲しい。進出企業が抱える問題や現状について、地元政府関係者と率直に懇談できる場や窓口が必要だと思う。進出企業に対するサポートの良し悪しが、その後の投資動向に少なからぬ影響を与える。

「日本企業は慎重すぎ。投資決定まで時間がかかり、せっかくのチャンスを逃している」が、東北地方では半ば定説(?)のようになっている。政府関係者と話をすると、「日本企業は視察ばかりで、最近はなかなか投資してくれない」と恨み節を聞かされる。その度、「日本企業は投資決定までは慎重だが、一度投資したら簡単に撤退しない良さもある」、「進出数は少ないが、有名大手企業が進出している」等々頑張ってみるが、口では負ける。

確かにここ数年、瀋陽では韓国や欧米からの投資が目立つ。遼寧省全体に占める外資直接導入額を見ても日本の投資額は香港、韓国、時に米国に次ぐ第3位か4位というポジションにある。東北3省の日本に対する期待は大きいが、その期待に応えるほどには、現段階では対東北投資が進んでいないのが実情だ。ただ、日本からの投資が期待通り進まないのは、日本サイドの問題ばかりではなく、東北地方の投資環境整備や進出企業に対するサポートにまだまだ改善の余地があることも事実だ。「相思相愛」になるには、互いのコミュニケーションを深めなければ……。

今後、中国東北地方と日本との間での経済協力を進める上で、双方が十分な「コミュニケーション」をとり、十分な「情報発信」をしていくことが必要だ。互いの認識のズレや企業が抱える問題の解決に向けた対応を率直かつ具体的にやりとりできる窓口もしくはシステムが必要だと思う。

中国東北地方は現在、東北振興政策を推進すべく、世界各国へ代表団を送るなど「投資誘致」活動に必死。中でも、日本への期待は非常に大きい。投資誘致戦略の一環として、ぜひ、情報交流面での「対外開放」にも努力してほしい。東北振興政策の進捗状況、東北地方への投資は珠江デルタや長江デルタに比べてどんなメリットがあるのか、日本企業にとってのチャンスはどこにあるのか、進出企業が抱える問題を解決するにはどうしたらよいのか……。スローガンではなく、外国人投資者が知りたいポイントをズバリ説くプレゼンテーションを、ぜひ聞きたい。

以上