中国との双方向経済交流を目指す地方の動き

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中国の改革開放政策が軌道に乗ったこの約20年間、日本の地方も製造業を中心に中国との貿易・投資が活発化し、経済交流に弾みがついた。その主たる要因は、決定的に安い製造コストを求めての拠点移動であった。

日中間の経済関係をヒト・モノ・カネ・情報の経営4要素という視点で見てみると、それらはいずれも極端な一方通行であると日々感じていた。すなわち、ヒトでは、観光客もビジネスマンも均しく日本から中国へ向かうのであって、中国人を日本に招くための手続きの煩雑さや日本での生活手配の面倒さは、比較にならない。一般の観光客にいたってはとても実現不可能と思えた。モノでは、ユニクロに代表される安価で品質の向上した中国製品の流入が衣食住、機械、ソフトなど多方面にわたる商品が日本市場に押し寄せ、一時は中国がデフレを輸出しているとまで喧伝されたのである。カネでは、いわゆる資本の流出で、企業の中国進出は下請けや系列に支配される地方の製造業において急速に進んだ。情報もしかり。私のようなコンサルタントに求められるのは、少しでもビジネスを有利に進めるために、いかにして正確、広範に中国情報を「収集」してくるか、というものばかりであった。

言い換えると、ヒトとカネは出て行くばかりで、モノと情報は入ってくることばかりだったのである。私は5年ほど前から、これらすべての逆の流れを作り、地方から日中経済関係を双方向化しようと活動している。ヒトでは、中国人の観光客、ビジネスマン、研修生、就学生などをもっと受け入れる活動であり、モノでは、地方の地場産品、特に農林水産品や食品、伝統工芸品などをアジア市場に向かって輸出することである。カネでは中国企業を誘致し、本家に負けない外資受け入れの拠点を作ることである。また、これらの流れを生み出すために、地域情報をアジアに向かって「発信する」ことの重要性を訴えている。

この逆方向の動きは、もちろん私が最初に言い出した訳ではない。各地でその芽は生まれつつあった。物価の高い国からモノを輸出できるだろうか?コストの高い国へわざわざ投資をしたり、観光に来たりすることなんてありえない、そう考えるのが常識である。往々にして我々日本人は、情報が氾濫している割には外部環境の急速な変化に対して鈍感な部分がある。中国・アジアでの富裕層・中間層の出現、内外の物価・コスト差の縮小や一部逆転現象、アジアの人たちが日本文化に関心を寄せている事実などである。

すでに、アジアと空や海で直行便が就航している拠点都市から、双方向化は進んでいる。新潟を例にとっても、新潟市は中国企業誘致活動にとても熱心であり、新潟県下の企業や団体は、日本酒やコメ、米菓、加工食品のアジア向けの輸出へも関心が高い。官民共同のこれらの動きは、地方自らで新たな活路を切り開くひとつの契機となり、地域や組織の活性化に大きな役割を果たすものと期待している。

これらの目標実現のためには、有機的な様々な連携が必要となり、従来の枠組みでは実行できない。私もこれまでにない緊張感に気が休まる間もない毎日だが、大きな手ごたえを感じている。なぜなら、この難度の高い「逆方向事業」を実現することが、すなわち日本を、特に地方を元気にする起爆剤となりつつあると実感するからである。

今、日本の地方から、静かではあるが、農業からハイテクに至るまでアジアを舞台にした元気な日本人が行動を始めている。これがうねりとなり、日本全体が大きく動き出す、と本気で考えている。冷静かつ精緻なアナリストの経済予測を、多くの地方の人たちの手でプラス方向へ上方修正させること、それが私の秘めたる想いである。