攻めの行動を始めた地場産業

|中国

「北京では日本のナシが一個2千円で売られているそうだ」これは、昨年4月小泉総理が原稿無しのスピーチで語った一節である。

いま、日本の数多くの県では、地元産農産物を海外に輸出するための支援策に熱が入っている。しかも、従前のような欧米向けに加え、今回はアジア市場を主な輸出先にしているところが時代の変化を感じさせる。

「世界一コストの高い日本の農産物が、物価の安いアジアで売れるはずがない」「日本国内でも様々なデザートやファーストフードが幅を利かせているので果物が売れないというのに」誰でもそう思うのが常識というものだ。高コストのほかにも、海外運賃、関税、検疫、為替、ダメージ損失など、出来ない理由を挙げればいくらでも列挙できる。

しかし、この3年ほどの先駆的地方の行動で、それの常識を打ち破るケースが次々と現れてきた。新潟県では、昨秋、上海向けに梨や洋ナシの輸出に成功した。通関手続きや物流など多くの難題を抱える中国に向けて生鮮農産物を輸出できたことは、特筆すべきニュースである。また、一昨年、青森県等のリンゴの台湾向け輸出が1万トンを大幅に超えたことにより国内価格を引き上げる効果を与え、生産者の手取り収入も十数年ぶりに増えたという。ほかに、福岡のイチゴ「あまおう」、鳥取の「20世紀ナシ」、島根の「ヘルシー米」、十勝の「ナガイモ」などの青果物が、香港、台湾、シンガポール等のアジア市場で好評だ。さらに昨年、我が国の規制緩和も追い風になり、中国向けに鮮魚など水産品の輸出が始まっている。

このような背景には、アジア大都市で、経済成長に伴う富裕層・豊かな中間層の登場、日本との相対物価の縮小、日本食の流行・定着などが挙げられるが、大きな契機のひとつとなったのが、SARS(重症急性呼吸器症候群)やBSE(牛海綿状脳症)、鳥インフルエンザなどの流行である。外食比率が高いアジアの家庭では、この間、自炊も増え、残留農薬問題などに加え、食材に対する安全性や健康に対する意識が急速に高まったためとも考えられている。

農産物といえども、自動車、家電のように「メイドインジャパン」がアジア市場では高級ブランド品である。食べ物に「こだわり」を求めるアジアの市民はこれからも増えることは間違いない。もちろん海外に生鮮品を輸出することは、物流・商流ともに多くの課題が存在している。また、香港やシンガポールのような都市国家を除けば、国内農業保護との摩擦が避けられない。それでも、FTA(自由貿易協定)、EPA(経済協力協定)など相次ぐ貿易自由化の流れの中で、いつまでも守りの姿勢では対応できなくなることを日本の生産者は感じており、一部の地方の元気人たちが行動を始めているのである。

新潟にも、梨のほかコメ、日本酒、米菓など日本有数の産物が数多くあり、スポーツで言えばイチローやナカタ、愛ちゃんのように国際リーグ、すなわち海外市場で国際試合をしているのである。また、燕・三条の洋食器は、戦後日本の外貨獲得の先駆者であり優等生であった。伝統的地場産業にも今、技術の粋を集めたプレミアム商品を世界に売り込むチャンスが訪れている。さらに、海外からの観光誘致、企業誘致や物流構築のため港湾空港道路整備など複数の地域振興策と密接にリンケージしているのである。

今回の地場産品の輸出事業は、単に国内で売れないから海外に販路を求めるのではなく、地方の人材が、人任せにせず、自分たちの力で新たな活路を開拓することにこそ本質があるのである。

がんばれ地方の元気人たち!!