ウランバートル上空の煙の幕
2005年11月01日|ロシア・モンゴル
インスティチュート・フォー・フューチャー 専務取締役
ゲレルチメグ・シャラブサムブウ
モンゴルは面積156.65万km2、人口280万人の国である。春夏秋冬の四季があり、気温は、夏に35℃、冬には-40℃になる。モンゴルの特徴である青い空に白い雲という景色は、1年を通じて見られる。
しかし、モンゴルの首都ウランバートルは、毎年10月から5月の間、煙に覆われる。このモンゴル最大の行政、社会、文化、産業の中心都市には80万人以上が住む。ウランバートルに移住する人も多く、毎年およそ10万人が農村部からこの首都へ流れてくる。
ウランバートルは低い盆地にあり、北のチンゲルテイ山、南のボグド山、西にソンギノハイルハン山、東にバヤンズルク山という山々に囲まれている。そのため、町は煙と埃の幕で覆われる。
ウランバートルは世界の首都の中で一番気温が低く、1年の約9ヶ月間は暖房設備が必要である。
大気汚染の原因は次のようなものである。
- 固定汚染源
- 熱電気複合利用施設(CHP)で使用される石炭、年間500万トン。
- 250基を超える手動発熱専用ボイラー(HOB)による石炭消費、年間40万トンと、二酸化硫黄(SO2)などの毒物放出、1万トン。
- 自動車その他の移動汚染源からの排出
- ウランバートルの自動車数は1990年以降増加を続け、輸送車輌は急速に拡大した。自動車の8割は燃料の消費と排出基準に適合しておらず、大気への汚染物質放出は毎年70トンになる。
- 地域汚染源
- 家庭用ストーブ。14万世帯がゲル(伝統的なモンゴルの居住施設)地区に住み、冬季には各世帯がおよそ石炭5トンと木材5m3を使い、ウランバートル市の大気汚染の約半分はここからきている。
- 燃焼。国際協力機構(JICA)の調査によれば、2005年現在、ウランバートルで出されるゴミの量は1日552.8トンで、ゴミ処理施設がない。ウランバートルには廃棄物処理施設はあるが、ゴミは戸外に放置されるため、異臭や火事、埃などの深刻な環境問題に発展し、これがウランバートルの大気汚染に繋がっている。
- 土埃もまた大気汚染の原因である。
大気汚染はウランバートルにとって深刻な問題となり、SO2や粉塵濃度が夏に比べて何倍にも増える冬に悪化するなど、季節的な変化が大きい。
[ERINA翻訳]