太陽政策は間違っていたのか?

|朝鮮半島

1998年に成立した韓国の金大中政権とそれに続く盧武鉉政権の対北朝鮮政策が、太陽政策といわれる宥和政策であることは良く知られている通りである。しかし、2006年10月9日に北朝鮮が核実験を行ったことで、韓国では太陽政策に対する評価をめぐって論争が起こっている。太陽政策を推進したために北朝鮮が核開発したという批判も出始めている。10月25日には、盧武鉉政権の下で太陽政策を推進してきた中心人物である統一部長官の李鍾ソクが辞任を表明した。しかし、盧武鉉政権が太陽政策を放棄すると表明したわけではない。「太陽政策は間違っていたのか?」という議論はこれからも続きそうである。しかし、それは、太陽政策の目的が何であるのかによって評価が分かれるはずである。

もし、太陽政策の目的が北朝鮮の核開発を中断させることであれば、それは失策のはずである。というのは、太陽政策による北朝鮮への資金流入は核開発の一助になっていたことが容易に想像できるからである。核兵器開発は非常に費用がかかる。経済規模が小さい北朝鮮にとって、それは痛みを伴う支出であったであろう。ならば、韓国や中国から流入する資金が、北朝鮮に核兵器を開発する資金的余裕を与えたことは否定できない。

北朝鮮を宥和して危機感を与えなければ核開発しないだろうと韓国が考えていたのであれば、それは明らかに勘違いである。北朝鮮が危機感を持っているのは、米国からの脅威であって、韓国からの脅威ではない。米国による宥和政策は、北朝鮮に安心感を与えよう。しかし、韓国による宥和が北朝鮮を安心させるわけではない。

しかし、もし、北朝鮮の体制を変えたり、崩壊させたりすることが目的であれば、太陽政策はあながち間違いとはいえない。というのは、経済発展に伴う社会変動は軍事クーデターの一因になるからである。もちろん、経済発展が必ずしも軍事クーデターを生むわけではない。しかし、経済発展による社会変動は政府の統治能力を弱めるため、政府を転覆させる軍事クーデターが起こりやすいことは知られている。

経済発展ではなく、社会で飢餓状態が広がれば北朝鮮の体制は不安定になるという意見をよく耳にする。だが、中国共産党とソ連共産党は、飢餓が蔓延していた時期でも統治が安定していた。飢えた人々が、体制崩壊によって食料を得られるとは限らない。飢えを満たすには、体制を倒すよりも、食料があるところに逃亡したほうがより賢明であろう。逃亡した住民が政権を不安定にするわけではない。だから、飢餓によって政権が不安定になるという意見は、あまり適切ではない。

体制崩壊すれば、北朝鮮は核放棄するから太陽政策は正しかったと言い始める人もいるかも知れない。しかし、体制が崩壊したからといって、核兵器を放棄するとは限らない。それはパキスタンを見れば分かる。1998年に最初の核実験を行ったパキスタンでは、翌99年にクーデターが起こって政権が転覆した。しかし、今でも核兵器を保有し続けている。民主化すれば核放棄するだろうという主張もあまり説得力がない。核兵器を保有している国の半数以上が民主主義体制という現実を見れば、民主化が核放棄につながると考えるのは早計である。

太陽政策をめぐる論争は、これからも続くであろう。しかし、太陽政策の目的を曖昧にしたまま論争が続いても、水掛け論に終わるだけである。韓国は、この論争のために、外交ではしばらく身動きが取れない状態に陥るかもしれない。しかも、大統領選挙まで約1年しかないため、選挙候補者間でもこの論争は続けられるであろう。韓国の外交政策はますます混乱を極めていくかも知れない。