「風」

|中国

気象庁のホームページを見ると、通常「風速」という場合、10分間の平均風速のことを指し、瞬間風速とは0.25秒間に計測した風速で、平均風速の1.5~3.0倍に達することがあるとのこと。

ところで最近の日中関係をたとえて「風向きが変わった」「追風が吹いた」などの言葉をよく耳にする。昨年秋に両国首脳が会談を行なって以来、それまでとは手のひらを返すような印象を与えている双方の報道の姿勢を指しているのだろう-、と多少割り引いて思っていたが、案外実態も近いのかもしれない。新春、都内で開いた日中賀詞交換会も例年より熱気にあふれ、挨拶に立つ関係者の口からも歓迎ムードと今後への期待を感じた。その後も随所で期待感あふれる言葉や見通しを聞く機会も多く、人の往来も増えているようだ。これまで逆風の中で地道に活動した多くの両国関係者の尽力が実ったことは大変喜ばしいことだが、表舞台に登場する政治家や評論家などの先生方には、「今鳴いた烏がもう笑う」の実像を見せつけられる感じもする。これが政治なのだろう。

政治の盛り上がり?はさておき、これまでの両国関係を支えてきた経済・投資面では落ち着きを見せているといえそうだ。昨年、中国に対する外国投資は件数がマイナス、実行額はほぼ横ばいであり、中でも日本は件数、実行額ともに大幅に減少した。これを踏まえて第3次対中投資ブームの終焉という人もいるし、彼方から「もっと経済交流を盛んにしよう」という声も上がりそうな気配だ。

確かに中国の外資優遇政策見直しや人件費・土地価格の上昇などのコスト高、リスクの分散志向による他国への投資転換などマイナス要因は増えている。しかしながら1件当りの投資額は増加している上、M& Aに関する大規模な投資や、既存進出企業の事業拡大、中国内国販売の業績向上など、今後へのプラス面の要素はまだまだ大きい。さらには政治の舞台でも取り上げられている環境や省エネに関する取り組みは、まだ幕開けと言ってもよさそうだ。

また日本、韓国、アメリカなど対中投資の先駆者的な国々が対前年割れし、香港やEU諸国などの対中投資が件数・規模ともに拡大傾向が続いている。これは対中投資の減退と考えるより、企業の対中設備投資が成熟期に入り、本格的に中国経済と交流する新たな経済関係の始まりと言えるのではないだろうか。

こんな時期だからこそ、忌憚のない議論と相互理解するための努力が必要だ。「歴史を鑑とし、未来に目を向ける」という言葉を、“この数年”中国の指導者をはじめ多くの人が口にした。両国の政治的・感情的な冷え込みが続いた“この数年”も、もう立派な歴史の一部。反日デモや外交的な反目などが目立った歴史も忘れないで、冷静に信頼関係を築いてほしい。同様に経済関係においても、統計数字だけを見て大騒ぎすることなく、お互いの利益となる方法をよく考え、重要な課題や改善点は双方ではっきり主張すべきだろう。日中関係に携わる一人として、個人ができることでも努力したいと考える。

現在の二国間関係が、実は最大瞬間風速だった、などと言うことがないように願いたい。