青い空の意味は

|中国

つい数年前、北京に留学していたころのこと。青空が広がると、その夜のテレビのトップニュースが予想できた。「今日は外国の要人が北京に来たんじゃないか」と。周辺の工場の操業を止めて青い空を演出している-、とまことしやかに噂されていたが、毎日スモッグで薄暗い空を見上げていただけに、今でもそうだったと信じている。そしてテレビを見ていると、天気予報の後に空気予報が流れて、翌日の各都市の大気がきれいかどうか紹介されていた。「上海・・・不好(ニュアンスから言うとダメ!という感じ)」と言われて、どうしたものかと思ったりもした。

ところで中国政府は「第11次5ヵ年計画」の主要課題として、環境保護と省エネルギー問題を取り上げている。産業分野ごとにも旧式設備で汚染源となる中小工場の閉鎖など、様々な施策を打ち出しているほか、2010年にはGDP単位当りのエネルギー消費を20%削減する方針や、「エネルギー資源に関する11.5発展ガイドライン」などの関連指針を通達した。これらは確実に成果を挙げて、劇的に中国は変わっていると美しく話を結んでしまいたいところだが、現実はそうでもない。2006年、主要汚染物資の排出量の全体量は前年より増えてしまい、単位エネルギー消費量も0.8%の増加という結果に終わってしまった。

環境と省エネルギーを同列で取り上げるのもどうかと思うが、理由の根底には大差はなさそうな気がする。1つは政策。不良工場の淘汰の推進や、環境規制の強化を次々と実行することも重要だが、淘汰される企業の雇用者へのケアや、厳しい基準をクリアするための方法・技術・資金の支援などが目に見え難い。不透明な先行きの中で、大企業ならともかく、地方の中小企業の経営者や地域住民に対して将来的に有効な設備への投資を進めたり、工場の閉鎖を迫るのは難しいことだろう。

もう1つは「投資=儲け」で、経済成長路線を突っ走ってきた風潮。次々と誕生する若い大富豪がもてはやされ、企業経営者はひたすら利益を追求するという中、目に見えるお金のみに皆の視線が向いている。バブルの様相を示す中国証券市場に、多くの市民が全財産を費やす感覚にも相通ずるものがある。これが環境・省エネ問題の最大の障害かもしれない。

儲かることに金を掛けるのは当たり前。では、省エネルギーに金を掛けて儲からないのかというと、長い目で見れば経費も削減できて結果的に儲かるというのが道理。環境保護についても、公害問題が起きてから生じる莫大な補償金や企業イメージの悪化を踏まえると、金を掛けることは当然のことと思われる。しかしながらその観点に至る前に、設備改善による短期的なコストが増大のほか、既存設備の運営改善に費やす時間と労力さえも惜しみ、日々の損得勘定だけで経営している企業は少なくない。もっとも、企業や人々が目先の利益を追求した結果、公害問題の悲劇やエネルギーの浪費・高騰に国民全体が悩んだ顕著な事例は日本に山積みしているので、一概に中国を非難もできないのだが。

ただ、北京の空も、最近はずいぶんと青くなった。市内に工場が減ったのもあるが、排煙脱硫施設などの設置をはじめとした環境対策が進んでいることも大きな理由だ。また、市民の意識も向上しているようで、先日、市内の火力発電所を訪問したが、少しでも煙突から煙らしきもの(実際には廃棄物処理した後の水蒸気)が見えると、周辺住民からクレームが来るそうだ。

次回、北京で暮らすことになる際は、青空を以前とは違う気持ちで見られることを願いたい。ちなみに今でもちゃんと大気汚染の指数、物資、等級などは毎日各都市で発表しているので、興味のある方はぜひご覧いただきたい。