政治改革を大きく一歩踏み出した中国

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元中国共産党総書記の故・胡耀邦氏九十歳生誕日。その2日前に当たる昨年11月18日、中国は人民大会堂で胡耀邦氏の再評価に関する会議が開かれて以来、そろそろ1年の歳月を迎えようとしている。会議が開かれた時、韓国で開催されていたアジア太平洋経済協力会議(APEC)に参加した最高指導者の胡錦濤国家主席こそ不在だったが、温家宝首相が会議を主催。胡氏の長男・胡徳平氏のほか、胡氏とつながりが深い関係者約三百名が臨席し、曽慶紅国家副主席が再評価に関する文書を読み上げた。

これは決して胡耀邦一個人に対する再評価だけにとどまらない。民主化を求めた天安門事件(1989年6月4日)に対する再評価への第一歩で、中国が大きく生まれ変わろうとしている胎動なのではないだろうか。

会議2日後の同月20日には、APECに参加した米国のブッシュ大統領が北京を訪問。胡錦濤氏をはじめ中国の政府要人らと米中間の重要な政治課題について、米中首脳戦略会談を行った。そのころ、故胡耀邦氏の再評価について、日本国内の反応は極めて冷ややかで、誰も本気にはしていない様子。「単なるブッシュの中国訪問への土産では」「胡錦濤国家主席が不在だったということは、胡錦濤体制がまだまだ一枚岩ではない証拠だ」「今回の再評価は全面的な名誉回復に至っていないため、中国の民主化はまだまだだ」との見方が支配的となっている。

けれども、ブッシュへのリップサービスだけのために、政治的なリスクを冒してまで再評価を行うのだろうか。

中国政府筋要人によると、胡錦濤氏が政権についてから、胡躍邦氏に対する再評価をいつ行うか、そのタイミングがずっと図られていたという。党中枢の中で抵抗勢力が依然として強いため、なかなか踏み込めなかったが、今回は世論形成という「外堀」と、地方から体制を固めて攻め込んでいったというのだ。

再評価会議は予想よりもかなり小規模な形で行われたものの、再評価に関する文書を江沢民・元国家主席の腹心中の腹心だと言われている曽慶紅氏に読ませたことの重要性をしっかりと認識すれば、胡錦濤体制がこれから突き進もうとしている方向が見えてくるはずだ。

今、中国政府は、「政経矛盾」で押しつぶされる危機にさらされている。そのことを避けるためにも、16年前に胡躍邦氏が政治生命をかけて訴えていた、経済改革と同時に政治改革を行うことがどうしても必要不可欠なことであると認識し始めている。今、静かに一党独裁から「複数政党制」への移行が目指されているのではないか。その視点で中台関係を見渡せば、昨年4月に初訪中した台湾の連戦・前国民党主席らの相次ぐ大陸訪問、馬英九・台北市長の国民党主席への就任、このたびの台湾における総選挙での国民党の圧勝…、台湾に対してくだもの等農産物無関税などの経済的優遇策、この度の台湾の政治的動向等などが、全く無関係とは言い切れないようだ。

今後、中国が国民党を巻き込んで複数政党制を採用すれば、中台関係は急速に改善し、従って米中関係も一気に改善されるだろう。そうなったときに、日本はどうするのか。胡躍邦氏に対する再評価は、実は日本の未来に大きくかかわる出来事だと思うのは、私だけではないはずで、安倍新政権にしっかりと国の舵取りをしてほしいものだ。