「企業所得税法」可決で転機を迎えた中国の外資誘致政策

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中国の全人代(第10期全国人民代表大会第5回会議)が3月16日に閉幕した。胡錦涛-温家宝政権が、「経済成長至上」から決別し「和諧社会」実現を目標とする路線を毅然として推進するという決意が改めて表明され、圧倒的な信任を得た大会として記憶される事になろう。

討議事項の中で最も注目されたのが「企業所得税法」「物権法」という数年来の懸案であった2つの重要法案である。

「物権法」は04年の全人代で憲法を改正して認めた「私有財産の不可侵」を具体化する法案だ。法案の策定過程で中国共産党内保守派からの猛烈な反対意見が浴びせられたが、結果的には圧倒的多数の賛成で可決された。本法案の可決は外資企業にとっては中国の基本的な投資環境の改善に繋がるものとして歓迎されている。

外国企業にとって、より重要な意味を持つのが「企業所得税法」が可決された事であろう。従来、中国の企業所得税(法人税)は、国内企業と外資系企業との二本立てであった。基本税率はいずれも33%(うち国税が30%、地方税が3%)だが、外資系企業の多くには、そのエリアや業種に応じて優遇税率(10%~24%程度)が適用されている。また「二免三減半」(利益の出た年から2年は免税、3年は半額免税)といった優遇措置が採られ、中国の外資誘致と経済発展に大きく貢献してきた。

しかし、国内企業からの「不公平税制」との批判に加え、国内企業が一旦資金を海外に移してから再投資する等の弊害も目立つようになり、内外企業の税制を一本化する動きが数年前から察知されていた。今回成立した法案の主旨は、(1)内外企業ともに基本税率は25%に統一。(2)「環境関連、資源の総合利用、インフラ等の特定分野」、「ハイテク企業」「零細企業」「少数民族自治区内の企業」等には、内外の差別なく優遇税率を適用。(3)すでに優遇を受けている外資系企業については原則5年間の移行期間を経て新税率に移行、というもので、08年1月1日より施行される。今後は導入する外資について選別を強化するという方針の現れでもある。

しかし、法案を読むだけでは、優遇を受けられる「ハイテク企業」等の定義や、移行措置期間中の具体的な税率の取扱等、不明な点が多い。先日、東京で開催された日中投資促進機構主催による「中国外資政策セミナー」で、中国当局の責任者が説明したところによると、07年末までに「実施細則」を公布して具体的事項を明確化するとの事であった。

この「実施細則」が確定するまでは、個別の企業にとって増税となるのかどうか、なる場合もいつ頃から影響が現れるのかを特定する事はできないが、相当程度の企業にとって増税となる事は避けられまい。また競争相手の内国企業の多くは減税となるので、分野によって中国市場での競争はますます苛烈になろう。

しかし、冷静に考えれば、我々外資サイドは従来、内外企業に対する公平な取扱を中国に要求してきた面もある。今回の税制一本化は、中国が市場経済の国として成熟して行く過程で、避けられない通過点であろう。

今後、我々は中国への投資を計画する際に、より一層、当該プロジェクトの中国市場での優位性・競争力等につき慎重に検討を行う必要があろう。また、中国当局には、せっかくの新税制が運用過程で透明性や予見可能性を欠き、結局は不平等が継続した、という事にならない様に留意して頂く事を期待している。