新しいものを入れるには基礎が必要

|ロシア

経済発展のテンポが速い最近のロシアには、ありとあらゆるものが先進国から入っている。その中でもソ連が崩壊し、長期間にわたった経済危機と経済不安定な時期が最も影響を与えた生産工場などが、国際レベルから大分遅れていることが明らかになっている。そこで、若くて外国で研修をうけた経営者はもちろん、ソ連時代を経験したベテランの経営者までもが、外国流の生産システムに目を向けるようになっている。販売活動をする上で必要な国際基準ISOのようなものはもちろん、生産効率を上げる生産管理システムも大変注目されている。なかでも世界的に知られている日本の生産管理システムに人気が出て、普通の本屋でも英語から翻訳された本が5-6種類は必ず置いてある。通訳の仕事で工場見学にはよく行くが、事務所にもそのような本が飾ってあったり、廊下にもスローガンの書いた看板があったり、生産現場でも日本生産管理システムを導入している様子をたくさん見かけることができる。

しかし、私の個人的な印象に過ぎないが、その活動は経営者の自己満足のためだけに行われているもので、従業員たちは関心があまりなく仕方なくやっている、もしくは実際には活動が行われておらず、看板だけで終わっているという状況がよくある。生産効率を増加させるという効果があり、こんなに綺麗に響く生産管理システムになぜ従業員は関心を向けないのだろうか。実際はいろいろな複雑な理由があると思うが、それは、システム(と言っていいかどうか分からないが)の根本を理解していないからだと思う。

従業員の考え方では、システムが生産効率を上げる、コストを下げるという目的を達成するための手段は、もっと働かされ、不必要な人がリストラされるということになる。それにプラスして、決して高くない給料ではがんばっても影響はないという思い込みもある。

そのような状況では、いくら経営者が必死になってトップダウン的に導入しようとしても、失敗に終わるにちがいない。よく経営者が苦労話をする時に、「ロシア人は文化、メンタリティーが違うから」とか「日本人は働き者で賢明な民族だから」ということを、うまくいってない理由として話すが、ここには経営者自身のシステムに対する理解不足があるように思う。要するに、改善活動にしても、5S活動にしても、どんな流行しているシステムにしても「働く人の環境をよくすること」が目的の1つになっている。しかし、ロシアの多くの工場の現場の従業員は正社員であるにも関わらず、アルバイトやダーチャでの仕事をしないと生活ができないような状況の中にある。そんな状況で上の人に改善しなさいと言われても、行動を起こせないだろう。また、現場の重要性の意識、現場のプライドの意識も、日本よりずっと薄いように思える。

成功している生産の表だけではなく、それを支えているものも見た方がいいと思う。そうすれば、ロシアの人も日本人のように、給料で家族が(少なくとも)1ヶ月生活ができる、そして何かあったら会社が保証してくれるという安心感があれば、仕事に集中でき、会社のことも大事に思え、改善をする余裕も出てくるのではないだろうか。