モンゴルのカシミヤ加工産業をめぐる課題

|モンゴル

カシミヤ加工生産は、モンゴルの輸出に大きな影響を及ぼす戦略的に重要な部門である。生産量全体からみると、カシミヤ製品は金、銅に次いで輸出の第3位である。
カシミヤの品質の良さは世界市場で高く評価されている。中国とモンゴルは、カシミヤ原料の豊かな国として位置付けられている。
世界では年間約14,000トンのカシミヤが出回っている。このうち、67.7%が中国、21.0%がモンゴル製で、残りはパキスタン、アフガニスタン、イラン、ロシア、アルバニア、カナダなどの製品である。さらに、イタリアおよびイギリスは世界中の市場から毛を梳いたカシミヤを集め、付加価値のある製品を作っている。
モンゴルのカシミヤ加工産業の発展は、次のような問題と直接的に関わっている。

1. カシミヤの価格

カシミヤの価格は、国内市場だけではなく、世界市場の需要にも左右される。言い換えれば、カシミヤ価格は国際価格の変動に大きく依存している。1㎏当りの毛を梳いたカシミヤの価格は1990年に127ドルであったが、1993年に37ドルに下落し、1998年にわずかに42ドルまで上昇しただけであった。この価格は2000年までに上昇したが、2001年に再び下降した。今日の国際市場において、1㎏当りの毛を梳いたカシミヤの値段は、中国製が68~79ドル、モンゴル製が55~57ドルである。
カシミヤの価格は品質によって変わる。良質のカシミヤの値段は、低質の30%を上回る。モンゴルのヤギからは非常に良質のカシミヤが取れるが、その質は過去10年間に下がっている。これは、モンゴルでは質より量に重点が置かれているということと関係している。
中国のヤギから生産される大部分のカシミヤは白い色をしている。そのため、原料となるカシミヤの90%以上は、直径6.5ミクロン、長さ35~37mmの白カシミヤで、モンゴル製の80%は5%の白と70%の黒、濃褐色を含む暗い色合いで直径6.5ミクロン、長さ35~37mmの色の濃いカシミヤである。そのため、世界市場において、モンゴルのカシミヤの価格は中国のカシミヤより13~22ドル安い。
世界市場におけるカシミヤ価格の恒常的な変動は、モンゴルのカシミヤ加工産業にマイナスの影響を与えることから、国内のカシミヤ原料生産の完成に対する適切な状態を確定し、完成品の輸出に力を入れることが、この部門の発展にとって重要である。

2. カシミヤ加工産業の構造、能力および利用

1980年以降、世界市場において天然の原材料からできる贅沢品に対する需要が高まったことは、モンゴルのカシミヤ生産分野が集中的に発展する引き金となった。
1989年には、モンゴルにはカシミヤとラクダ羊毛加工工場が1件しかなかったが、今日、国内・合弁合わせて85の工場が建設されている。外国投資ベンチャーの60%は中国で、他に日本、イタリア、スイス、アメリカが投資している。
新しく建設された工場の多くは、洗毛並びに毛を梳く作業に重点が置かれていることから考えて、洗毛工場の規模は原材料資源工場の1.8倍、毛を梳く工場の規模は1.3倍である。工場がその最大能力の40%しか使用していない限り、工場の稼動にマイナスの影響を及ぼしている。一方、現在の紡績能力は原材料資源能力の3.6倍である。モンゴルのカシミヤ加工産業構造から見ると、2000年から2002年にかけて、初歩的な加工工場の占める割合が30.0%減少し、編物工場が24.8%増加、年間660トンの毛糸と700万着の毛織物を生産するという前向きな流れが訪れる一方、紡績能力は洗毛及び毛を梳く生産に比べてまだ低い。そのため、モンゴルの編物工場の多くは中国から糸を輸入して製品を作っている。モンゴルで作られる編物製品の30%はカシミヤ製品で、そのうちの20%はモンゴルで準備された糸から作られる。
この紡績能力の欠落は、モンゴルのカシミヤ加工産業の発展を遅らせ、競争力を弱めている。紡績能力を増加させるにはそれなりの投資が必要となる。現在の国内資源では、この投資の問題を解決する可能性は全くない。代わりに、海外からの財源を徹底的に探すことが重要である。
モンゴルは2006年7月にヨーロッパ復興開発銀行から貸付権を与えられた。また、世界銀行その他の多くの国際機関からも様々な長期低利貸付が与えられている。これらの銀行と金融機関との一貫した協力が、カシミヤ加工産業の紡績能力を増加させるというプロジェクトの実現成功に役立つと思っている。

3. 競争力

モンゴルがすべてのカシミヤ原料を加工せず輸出した場合、輸出額は6,000万ドルとなる。ヨーロッパ市場に輸出する前に毛を洗って梳いた場合は、輸出額は90~1億ドルとなる。さらにそれらを製品に作り上げると、1.8億~2億ドルとなる。この単純な計算によれば、製品の製造がより有益であることになる。それではなぜ、より多くの利益を確保するために、このような戦略を取り入れないのか。そこには、次のような問題があるからである。:

  • 今日、モンゴルで製品を製造するのに使用される原料のうち、国産のものは55.9%だけである。
  • モンゴルのカシミヤ製品の競争力は、中国に劣る。中国は原料輸入国ではなく、すべての原料を国内生産している。中国の輸出の67.7%は贅沢品である。中国によれば、「顧客尊重の3原則」を適用しているという。世界市場において、顧客の期待を超える戦略の導入、顧客獲得のためのエネルギーの投入、そして絶えず変化する顧客の要求に柔軟に対応することである。中国は、国際市場と顧客を取り込み、目標とする市場と顧客に対する良質なサービスを提供する最善の努力をして、柔軟に顧客の要望と関心に対応するための長期的視点に立った戦略を行っている。

モンゴルのカシミヤ加工産業の競争力を上げるためには、次のような対策が重要な役割となる。

  1. 原料収集体制の強化。モンゴルの原料収集体制は、管理がされておらず、危なっかしいうえに、遊牧民、生産者、販売者相互の連携が欠けていて、最も時代遅れの商業的な構成をしている。この活動を規制するのに必要不可欠な法的環境の設立が失敗し、国内の原料市場は中国の貿易業者の影響を受けている。従って、原料の供給、利用、輸送、保管、取引を規制するために必要な法的環境を、即時に確立しなければならない。これは市場経済に必要で無視できない。
  2. カシミヤの品質、競争力および価格は、色、長さ、直径に関係する。従って、白いヤギの数を増やし、カシミヤの直径を細くしてカシミヤ生産を増加させることにより、必要な対策を徐々に実施することが重要である。
  3. 製品の海外市場への拡大と、新しい市場に入り込むための可能性を増やすための積極的な働きかけ。
例えば、毎年、世界市場では7.6億~10.5億ドルのカシミヤ製品が販売されている。アメリカ、日本、EU諸国はカシミヤ商品の主要な消費者である。
2006年7月から、モンゴルがEUの「GSP+」(関税特恵一般システム)プログラムに加わったことから、7,200種類の製品が輸入関税なしにヨーロッパの市場に参入でき、ヨーロッパ市場におけるモンゴルのカシミヤ製品の販売と輸出の増加に大いに役立っている。私たちはこの機会を効果的に、適切に、そして完全に利用すべきである。
日本はモンゴル最大の貿易相手国の1つである。モンゴルの対日輸出の78.7%は織物製品で、そのうちの90%はカシミヤ製品である。しかしながら、最近のマーケティングの努力はそれほど先を見越していないため、日本の市場への参入を目指したマーケティング活動を開発することは重要な課題である。
今日、韓国がモンゴルのカシミヤ製品輸入に大いに関心を寄せているので、モンゴルのカシミヤ製品の市場拡大に新しい可能性が提供されている。
シベリアと極東ロシアでモンゴルのカシミヤ製品に対する需要が高い。モンゴルとロシアの間には関税解決の課題がある。ロシアのWTO加盟に際して、モンゴルはロシアとの間に関税合意を結び、2005年10月、協定にサインをした。ロシアがWTOに加盟後、この合意が実行されて関税と税が円滑に進むことになる。しかし、これに先立ち、モンゴルの実業家たちは合弁事業立ち上げの手段として、シベリアその他ロシアの領域に向けたモンゴルのカシミヤ製品輸出増加の可能性を探る方がよい。

2005年12月31日に繊維製品と布に関するWTO協定が交わされたときに、モンゴルは、中国とインドが、アメリカ、東南アジアの市場で受けているものと同じ取り扱いを受けることとなった。その結果、この制限は昨年のモンゴルのカシミヤ製品の対米輸出の減少を引き起こした。言い換えれば、昨年と同様の輸出高を保つために、モンゴルはカシミヤ製品対する輸入関税の引き下げを保証すべく政府間経由でアメリカと交渉すべきである。
モンゴルはカシミヤ原料の処理が最も盛んな国の1つであることから、この市場において独自に声をあげて存在を示さなければならない。そのため、より徹底的な宣伝活動を行い、電子商取引ネットワークで大いに存在を示すために、国際展示会や品評会への参加を増やす必要がある。
最後に、モンゴルが競争力を上げて付加価値の高い製品の生産を増加させることができるなら、カシミヤ加工産業の発展は新たなステージに入るであろう。

[ERINA翻訳]