モンゴルの皮革加工産業の発展が直面する課題

|モンゴル

過去2~3年の世界の製造量全体で、牛革は1.3%、羊・山羊革は1.9%増加している。とりわけ、中国、韓国、メキシコ、ブラジル、インド、パキスタン、タイに多くの皮革加工工場が作られた。その中で最も加工産業の成長が著しい中国では、2005年の皮革製品の輸出量は前年比19.2%増、輸入は5.7%増であった。2005年の中国の靴の輸出は146億ドル相当に上り、世界で作られる靴全体の50%を占めた。
今日、牛革製品の60%、羊・山羊革製品の72.1%は発展途上国で作られているが、その製造量は減少している。
また、牛革生産は減少する一方、羊・山羊革生産は増加し、世界の主流を占めている。

モンゴルの皮革加工産業部門

モンゴルの皮革加工産業部門は、未処理の動物の皮材料・皮革・毛皮衣料品の加工・輸出工場から成り立ち、国の主要な経済部門の1つである。モンゴルの皮革加工産業は、原材料資源の点で遊牧民と肉加工産業に直接的に依存している。
1980年代に、皮革加工産業では毎年、皮510万枚、羊革1,100m2、山羊革40万m2、靴底用皮1,000トン、各種皮革衣料品約24万種類、靴410万足、コート18万着を製造し、国の工業総生産の6.5%を占めていた。
過去10年間の中央計画システムから自由市場経済への移行で、この部門の構造は変化した。加工工場の形態と構造は、2000年以降、様々な加工能力をもった新しい中小企業へと変わった。今日、この部門の主体は、小規模工場である。
モンゴルの皮革加工部門の特徴は、次に示すようなものである。

  1. 国内原材料資源を元にしている
  2. 季節ごとの製造は、圧倒的に原材料が準備できるかどうかに依存している
  3. 製造サイクルが長い
  4. 原材料保存のために効率的な流動資本が求められる
  5. 短期的金利が高いため、商業銀行の貸付を通じた投資が難しいこと

皮革工場の製造と設備稼働率

今日、モンゴルには各種製造能力をもつ皮革工場が64施設あり、そのうちの34施設が従来通り、26施設が初期加工、8施設がウェットブルー加工を行っている。これらの工場では、山羊・羊の皮830万枚、牛などの皮60万枚を扱う能力がある。調査によれば、皮の初期加工を行う企業では製造能力全体の18.3%、ウェットブルー加工企業では40%しか使っていない。2002~2004年に、これらの工場では羊・山羊の皮300万枚を加工後、中国へ輸出し、国内市場に羊・山羊の皮45万枚、牛などの皮1万枚を供給した。
2004年の工場の設備稼働率は1989年の半分に減少しているが、その原因として、大企業の経営不振、時代遅れの技術・技法、経営方針の変化と市場消費の限界などが挙げられる。今日でも、工場の設備稼働率は上がっていない。例えば、モンゴル最大の皮加工工場の設備稼働率ですら10%にも満たない。
1992~1998年に設立された皮革・毛皮加工の中小企業の能力は小さいけれども、完成品を製造し、わずかながら国内市場に供給している。

皮革の輸出入

モンゴルの皮革製造部門の輸出の中で、原材料の輸出は大きな割合を占める。加工された皮革の99%は中国向けである。過去2年間の平均をみると、工場では600万枚の皮を製造し、300万枚のウェットブルーを輸出している。一方、国内市場には45万枚が供給されたが、生皮150万は中国へ輸出された。
国内のウェットブルー製造の品質が完成品を作る企業の要求に見合わないことから、韓国からのウェットブルー輸入量が近年増加している。2004年の統計によると、2004年には380万枚のウェットブルーが輸入された。

化学薬品

世界的には、皮革工場にかかる経費の10~18%は化学薬品の購入である。これは、その国の地理的位置と経済発展レベルに応じて異なるが、モンゴルの場合は、皮革加工用の化学薬品はすべて輸入されており、内陸国であることから時間と費用がかかり、化学薬品にかかる費用は製造コスト全体の約24%に上る。化学薬品の国内生産が行われていないことから、地元の皮革加工産業は化学薬品を主に中国からの輸入に大きく依存している。製品の品質改善のためには、化学薬品の種類と品質を伸ばし、適切に使用することが重要である。
財政手段の不足で、モンゴルの製造者は、高品質で環境に優しい化学薬品を使うことができない。このことは皮革部門の製品の市場競争力を下げている。

環境問題

皮革加工部門から環境問題を切り離すことはできない。皮のウェット加工の過程で水質汚染が最もひどくなる。皮革加工には、水の他に、有機溶剤、フェノール、無機塩類が使われる。世界の皮革加工工場の80~90%が皮なめしにクロムⅢを使用している。皮革工場からのクロム汚染排水量は、重大な問題である。ヨーロッパの皮革加工会社では、環境費用は流動資本の約5%を占めるため、皮革製造は下降している。他方、皮革加工産業はアジア、アメリカで伸びている。しかし、中国は税政策規制によって生皮の輸入を制限し、近年、環境保護につながるウェットブルーの輸入に注目している。
皮革加工で大量に消費される硫化物とアンモニアから発生する硫化水素が、周辺の土壌・大気を大量に汚染している。また、皮なめしで使われるクロムの残留物が環境廃棄物となり、深刻な国民の懸念材料となっている。廃棄物の排出が中央の排水処理施設につながっていない企業もあり、環境上の問題を引き起こしている。
皮革加工部門の排水処理施設が1972年に作られ、10,000m3/日の排水処理能力をもてるようになった。しかし残念ながら、その技術はいまや時代遅れとなり、その後の近代化も行われていないため、浄化の品質レベルは低い。汚水に含まれる大量のクロムⅢは、汚水処理施設の生物浄化能力に大きなマイナスの影響を及ぼしている。

皮革加工産業の発展に関連する問題

これまで述べてきたような状況は、明らかにモンゴルの政策立案者に対して皮革加工部門の発展の必要性の有無を問いかけている。モンゴルには極めて大きい原材料資源があることから、この部門の開発は恐らく正しいことだろう。多くの調査員、科学者、製造者たちがこの問題解決のために様々な取り組みを行っているが、適切かつ決定的な解決策はまだ見つからない。資源を基盤とする原材料がこの部門の発展政策を決める唯一の要素と見られていることで、この部門の発展に影響を与えるその他の重要な要素は無視されている。そのため、発展政策を決定づける最も重要な要素は、市場の変化と改革である。市場がなければ、例え高品質の商品が作られてもこの部門の前進はない。
先に述べたように、皮革製品の製造が減少する一方で、羊・山羊皮製品の製造は近年増加し、このことは羊・山羊皮製品に対する需要が伸びていることを示している。しかし、この状況は数年で逆転する恐れがあることも認識しなければならない。この部門がどのような急激な市場変化にも柔軟に対応できなければならない理由はそこにある。
1990年以降、モンゴルではこの方針を追求する多くの中小企業が設立されてきた。しかし地理的に広く分散しているため、この部門の発展と環境にマイナスの影響を与えている。
最後に、モンゴルの皮革加工部門の効果的な発展に必要と思われる手段について述べたい。

  1. 皮革加工中小企業を同じ地域に集め、廃棄物は中央排水処理施設に送られるようにする。このことで、環境に対するマイナスの影響は軽減される。/li>
  2. 化学薬品の供給は1つの施設からのみ行われるようにする。この場合、製造者は安価で良質な化学薬品を購入することができ、関連する政府機関は化学薬品の入手、保管、安全性を監視することができる。その結果、産業競争力が向上する。
  3. 2つの目標を掲げて投資政策を導入する。
    a)政府の投資による工業技術複合施設(排水処理施設)の建設。これは、小企業では能力的に難しく、また例え企業側の出資で建てられたとしても、投資コストの回収に時間がかかり、企業に損失が出る。そのため、利益を生むために企業は環境汚染が削減されない旧式のものを使い続ける。
    b)製造業者による製造技術・方法の改善に向けた投資。製造業者は政府の役人よりも技術改善のノウハウに詳しい。最小限の費用で独自の技術を向上させることができる。ただし、よく練られたプロジェクトが必要であり、自らそういうものを考え出さなければならない。このプロジェクト導入にあたっては、政府支援が必要となり、この部分で、問題に対する政府の適切な政策決定が求められる。
  4. 市場の需要・要求に応じた製品の輸出・販売の管理に注意を払い、競争力向上のための様々な活動に企業を参画させるよう導き、急激な市場変化に適応できる能力を養う手助けをする。この能力は企業・個人それぞれの態度や考え方に寄るとはいえ、この部門の発展に重要な役割を果たす。
  5. 国際環境から貴重な経験を学び、国内の状況に適応させることが非常に重要だと考える。過去数年間、モンゴルのアパレル会社は、海外からの注文に応じて完成品を作り海外に輸出し、この部門は急激な発展を遂げている。さらに、何百という働き口が広がり失業率も下がった。このようなアプローチが皮革加工部門にも導入できるのではないか。と
  6. 海外パートナーとの協力を拡大する。このような手法を広く取り入れている皮革加工企業をもつ中国と協働する。中国に倣ってモンゴルの皮革加工産業も成長する。

モンゴルの皮革加工部門について、私は前向きに見ているが、私たちに必要なのは、考えや計画を体系的かつ集中して実行に移す意思を作り上げることである。

[ERINA翻訳]