韓国新政権の行方

|朝鮮半島

韓国新政府は、今月25日の新大統領就任式を皮切りに、新しい出発をする。対内的には過去10年間に及ぶ、どちらかといえば分配と福祉重視から、成長と雇用重視へのパラダイムの転換を図る。対外的には、これまでのように自主外交を表に出し、北東アジアにおける周辺4強との間のバランサーを自称するというよりは、これまで弱体化されてきたアメリカとの関係を復元し、その基礎の上に諸外国との関係改善を図る。いわゆる実用主義的路線を一層鮮明にしていくものと思われる。

不幸にも、最近のアメリカのサブプライム・ローン問題に端を発する世界金融経済の不安定、国際的な原料・原油高、それに伴う国内株式市場の不安とインフレ懸念などが、二極化を含む以前の政権からの様々な負の遺産を清算し、10年以内に平均成長率7%(一人当たりGDP4万ドル)、経済規模世界7位という747の公約を実現するのに大きな障害要因になりはしないだろうか。新年早々、7%という数字目標はあくまでも潜在成長率であると逃げ腰の姿勢を見せた。しかしながら直近のダボス会議に出席した大統領職引継ぎ委員会の高官は、高成長の意地を崩さなかった。2月5日の引継ぎ委員会による新政権の政策課題が少なくとも実現されるという前提によるものと思われる。しかし、これら政策課題のための政策手段、相互間の対立や矛盾は、無視してはいけない。

まず、新政府の国政運営の青写真をみると、5つの国政指標(活気溢れる市場経済、人材大国、グローバル・コリア、前進的な福祉、国民を仰ぐ政府)と192の分野別政策課題を掲げている。主要分野別にみた幾つかの政策課題は次の通りである。

  1. 経済分野については、法人税課税標準調整と中小企業、最低税率引き下げ、R&D投資税額控除拡大、大企業集団出資総額制限廃止・持株会社規制緩和、事業会社の金融業参入緩和、規制改革、新成長動力ビジョン提示、サービス業競争力強化などによる300万個の新規雇用創出。
  2. 教育分野については、これまでの政府介入の大学入試の自立化を図る一方、初等教育課程における英語教育完成プロジェクト、大学運営の自立性確立、生涯学習口座制導入など。
  3. 福祉分野については、少子・高齢化時代における持続可能な社会保障システムを構築するため、赤字転落している共済年金改革、国民年金と基礎老齢年金の統合、持続可能な医療保障体系構築、金融疎外層の信用回復支援、不動産関連税制の改善による市場の安定、持家型分譲住宅制度導入など。
  4. 公的分野については、5+2広域経済圏構築、10%予算削減、政府機能と組織再編、公共機関の経営革新とそれに伴う予算節約分と税収超過分などを経済活性化や低所得層向け事業に振り分けることなど。
  5. 対外分野については、北朝鮮核問題解決を最優先課題に挙げ、非核・開放・3000構想と韓米間戦略的同盟を基本にする。この意味で、以前の太陽・平和政策とは一線を画す。

特に、韓米同盟については単なる同盟の水準を超え、新しい価値を共有し、未来志向的かつ包括的な同盟関係を築くとする。一方、アメリカとは立場を異にしてきた懸案の戦時作戦統制権についても、北の核や北東アジア安保情勢との関連で当初の交渉年度(2012年)を繰り上げ、再交渉の可能性を伺う。そして、韓米FTA早期批准、交渉中のEU、カナダ、メキシコ、インドとのFTA交渉を完結し、メルコスル、中国、ロシア、GCC、ペルー、オーストラリア、ニュージーランドとのFTAをも視野に入れる。肝心の韓日FTAについては、再交渉のための条件と時期を探りつつある。何よりも先進諸国とのFTAの場合、投資誘致とそのための環境整備を最優先課題に挙げ、デザイン・コリアプロジェクト推進に政策力量を集中していくとする。

ところが、以上のような新政権の政策を実行するにあたっては、次のような幾つかの懸念材料も浮び上がっている。大胆な政府組織再編に伴う49の関連法律改正に対する野党側の協力、韓半島大運河プロジェクトに対する国民的コンセンサス、前政権による首都圏規制と地方圏優遇に伴う各種地方開発事業の整理・統合・合理化、年金改革・公企業民営化、不動産価値税の引き下げ、真の弱者峻別などサプライ・サイドの難問をうまく乗り超えられるかということである。

4月9日の国会議員選挙は、サラリーマン神話の主人公、韓国初めてのCEO大統領の政治手腕が問われる一つの正念場になるが、アジア重視外交の日本の指導者と共に北京オリンピックと札幌環境サミット、韓日シャトル外交を契機に急浮上した中国に立ち向かい、韓中日3国の新しいパートナーシップによる切磋琢磨の心構えが肝要である。