福田外交とワシントン・北京からの求愛

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9月中旬、日ロ学術報道関係者会議の一員としてモスクワを訪問した。ロシアの外交ブレーンたちは、「西側のないユーラシア国際秩序」として上海協力機構を自慢げに喧伝した1。ロシアは「アジア版ヘルシンキ体制」をも構想しているが、それを実現させる最も容易い方法は、ロシアが既存の「東アジア首脳会議」(2005年発足)に参加することであろう。今の東アジア首脳会議はアメリカを除外している。ロシアが加われば、アジア・西太平洋を包括する国際協力の枠組みが出来上がり、そして自ずと日露中印はこの組織を主導する大国になる。

日本の新首相、福田康夫はNHKテレビ9月18日の報道によると、外交理念として「国連重視、日米同盟、アジアの一員」、アジア政策に「中韓ロシアを含む東アジア経済共同体の構築」を述べられた。そして「ロシアを含む」という言葉遣いは日本の政治家の中、いや世界の政治家の中でもはじめてのことであった。

10月1日、福田首相は所信表明演説で「アジア外交を積極的に進める」という言葉に続いて中国、韓国、アセアン、ロシアの順で4つの外交相手を取り上げた。演説の中に印度やオーストラリア等がなかったが、ロシアを「アジア」にした。

福田政権は日本版ネオコンの時代に終止符を打ち、安倍・麻生ラインの「価値観外交」を棄てたと断言できよう。野党の小沢一郎党首も「アジアの一員」という姿勢である。「脱亜入欧」から150年余り、日本はついに「脱米入亜」へという歴史的な大転換を始めたようである。

アメリカは慌てはじめた。福田が自民党総裁になった直後、ブッシュ大統領は「6カ国協議の席で拉致問題を言う」と表明したり、国連演説の中で日本だけを取り上げて「国連常任理事国に適格だ」と持ち上げたりした。

中国は「日中友好大攻勢」をかけてくるであろう。すでに11月に福田首相を北京に迎えたいと言ってきた。福田は11月にアメリカ訪問にも行かなければならず、さぞ忙しいことだろう。そして来年桜が咲く頃、胡錦涛が日本に行くぞとも言明した。胡錦涛は新たな「日中共同宣言」の締結を目指し、日本の歴史認識問題と台湾認識問題の徹底解決を迫るであろう。極めつけに天皇陛下の北京オリンピックへのご出席を求めるであろう。

繊細な日本人はこんなワシントンと北京からの「熱愛」に耐えられるであろうか。


  1. 中国新華社07年8月2日配信「没有西方的世界(西側のない世界)」(米誌『国家利益』07年7と8月合併号)文中「西側をコアとする世界体系の外に、中露印を中心とする別の世界体系の形成が目指されている」