国際金融市場での新たな潮流SWFへの中国の参入 ~日本版SWFの検討も~

|中国

ソブリン・ウェルス・ファンド(以下SWF:Sovereign Wealth Funds)という国家の金融資産を運用するファンドが注目されている。その特色は、リスクテイクし、積極運用で高いリターンを狙うと共に、国家戦略に沿う運用方針も見受けられる点だ。そのSWFの典型は、中東産油国のオイル・マネーを原資とするファンドやシンガポールの金融資産を運用するテマセクだったが、2008年前半には石油収入の政治的な運用を狙う露のSWFが加わる。その前の2007年後半には、中国が本格的に参入する見込みだ。中国の保有する外貨準備高は、2007年6月末時点で、日本を抜いて世界第1位の約1兆4千億㌦に達し、その一部が効率的な資産運用されることになる。

この資産運用の実施機関として、中国は2007年9月にも、「中国外貨投資公司」を設ける。その資金規模は約2千億㌦で、いきなり国際金融市場のメジャープレーヤーになることが確実である。既に、中国政府はこの約2千億ドルの一部につき、特別国債を発行し、中国人民銀行(中央銀行)から調達し、新設される中国外貨投資公司の資本金に充当させている。しかも、米国の大手証券ゴールドマンサックスからの人材起用も視野に入れているようだ。

また、中国は2007年前半、英銀バークレーズの蘭銀ABNアムロのM&Aにつき、買収資金の出し手としてテマセクと共同で英銀バークレーズの支援に回っている。ブリティッシュ・ガス(BG)にもBGの保有するカザフスタンのエネルギー資源権益を狙い出資しており、資源確保という国家戦略的な投資も窺える。今後は、中国政府の意を受けて、海外から中国国内向けのパイプラインに対する融資などへの投資の強化も考えられる。中国は、欧米の石油メジャーに伍して、グローバルな戦略投資を次々展開していくとも想定できよう。

ところで、日本の外貨準備は2007年6月末で約9千億ドルである。このうち年間輸入額である約6~7千億ドルは安全性・流動性を重視するとしても、約2~3千億ドルは余裕資金として収益性を優先する運用に振り向けてもよかろう。関連性はないが、年金の運用利回り低下や社会福祉事業収支の改善のために、積極運用してもよかろう。豪州では年金基金の赤字補填のために、豪州のSWFは、今年から余裕資産の積極運用を許容された。

さらに、この2007年5月、中国による米国投資ファンドのブラックストーンへの30億ドル出資は、クロスボーダーM&Aや国際資金フローに影響を及ぼすことを示した。米国は、数年前に中国海洋石油の石油大手ユノカル買収を拒絶した過去の経緯もあり、中国のSWFを警戒する。日本も注意すべきだ。例えば、中国のSWFが大きな出資者となる米国籍ファンドが日本企業を買収した場合、間接的にその日本企業は中国の支配下に置かれる。先進技術を持つ製造業など日本企業が買収先として狙われる危険性が一層高まる。安易なM&Aの規制撤廃は慎重さも必要だ。(9月12日記)