強まる中国と中南米の関係

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近年、高水準の経済成長を続けた中国は、食糧やエネルギーの安定確保を狙い、中南米との関係強化に傾いている。この背景には、政治・経済両面での情勢の変化がある。

まず、政治面では中南米で基調が変化した。2000年代に入って、中南米では全般に左派政権の成立や再選が相次いだ。このため、中国はいわゆる「米国の裏庭」である中南米に、よりアプローチしやすくなった。しかも、米国が主導する米州自由貿易圏(FTAA)は、中南米のリーダーであるブラジルと米国の協議が事実上中断したままで、中南米と米国の間にはやや距離が生じている。近年のブッシュ大統領のアルゼンチンやブラジル訪問では一般民衆による歓迎ムードは盛り上がらなかった。こうした中南米と米国とのぎくしゃくした関係を見極め、中国は中南米に積極的に接近している。

次に、経済面では、中国サイドの事情が変わった。成長により国民所得が上昇した中国は、食生活の欧米化や食用油、小麦などの消費量増大により、純食糧輸入国に転じている。モータリゼーションの加速や高層ビル・マンションの建設に沸き、エネルギーや鉄鋼石など資源や原料の需要増大にも直面している。つまり成長持続のために、食糧や資源の安定的な確保は急務という事情を抱える。

こうした事情を反映し、食糧については、世界有数の大豆生産地である中南米の最大顧客は中国である。世界生産第2位ブラジル、同3位のアルゼンチンが中国向け大豆輸出を増加させている。ブラジルの大豆輸出先として、中国はここ5年ほど連続で1位となっている。また、アルゼンチンの中国向け大豆輸出は大豆輸出全体の約6割を占める。一方、中国にとっても、その輸入量の8割以上を中南米に依存する。

エネルギーや原料など資源分野では、ベネズエラが、急進左派政権という点もあるが、中国に2005年から約15万b/d(日/バレル、以下b/d)の輸出を開始している。米国が最大の原油輸出相手であるベネズエラは、5年以内に50万b/dに輸出量を増加させ、将来的に100万b/dまでの中国向け輸出も視野に入れるという。また、深海油田が相次ぎ発見され、2006年に原油輸出国となったブラジルについては、その原油輸出先1位に米国が位置するものの、中国も同3位に食い込んでいる。さらに、ここ最近ブラジル産鉄鉱石の最大の購入者は中国である。中国はブラジルから年約6,000万トン超える鉄鉱石を輸入し、ブラジルの中国向け鉄鉱石輸出額はこの5年間で5倍以上に膨らんだ。

こうした中、中国は米州開発銀行への正式加盟に乗り出しており、中南米・中国の貿易・経済関係をさらに一層強化する体制を整えていく方針だ。折しも、パナマ運河拡張工事や南米横断道路計画について、その実現を後押しする動きも見受けられた。中南米と地理的・歴史的に関係が深い米国や欧州に対抗するために、中国は、物流ルートの構築まで手を回し中南米の豊富な食糧・資源を確実に獲得したいとも考えられる。