進む中国と中南米の経済関係の強化

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近年、中国と中南米の経済関係が深まっている。今後の中国の持続的な経済成長にとって喫緊の課題である食料・エネルギー・資源の安定的供給先として、中南米の地位が上昇し、両地域の貿易取引が拡大しているからである。とりわけ、大豆(ブラジル・アルゼンチン)、石油・天然ガス(ベネズエラ)、鉄鉱石(ブラジル)、銅その他(チリ・ペルー)などで、対中輸出が急増している。

2007年の中国の対中南米輸出額は約515.4億ドル、同輸入額は約510.6億ドルと、約4億8,000万ドル強の貿易黒字である。その地域別構成比(対世界)は各4.2、5.3%とまだ僅少ではあるが、注目すべきはその輸出伸び率である。06年の同輸出額(約360.2億ドル)から43.1%の増加率となった。これは06-07年間の対インド輸出の同率(64.7%増)や対アフリカ輸出の同率(39.7%増)と比べても、急伸する輸出先市場としての中南米の比重の大きさを示している。

こうした中、ブラジルと並ぶ中南米の経済大国メキシコとの関係はどうか。天然資源や鉱物資源およびその関連製品等を中心に対中輸出を拡大する南米と違い、メキシコでは対中赤字が累積中である。メキシコ中央銀行によれば、対中輸入額は2005年の約176.9億ドルから07年の約297.7億ドル、増加幅は約68.2%であった(地域別構成では米国・EU諸国に次ぐ同国第3位の輸入相手国)。特に電子・電気機器製品に関しては中国製品がメキシコ国内市場を席巻している。一方、対中輸出額は2005年の約11.3億ドルから07年の18.9億ドルとその金額は小さく、同国にとって中国は圧倒的な貿易赤字相手国となっている。

さらなる問題は米国市場におけるプレゼンスである。1994年北米自由貿易協定(NAFTA)発効後、米国との市場統合・一体化を促進したメキシコは、保税加工区マキラドーラを軸に対米輸出額を着実に増加させてきた。その地域別構成比もカナダに次ぐ米国第2位の輸入相手国(石油を除く)であった。しかし、中国がWTO加盟を果たした2001年以降、中国がメキシコを同順位で抜いてしまった。一例として、繊維・アパレル・履物といった労働集約的製品では、同国は中国の競争力に完全に太刀打ちできなくなっている1

もちろん米国境と隣接するため、輸送コスト・時間、労働力の熟練度や(同じNAFTA圏という)自由貿易制度面において、中国に対する優位性は保持している。しかし、労働コストやインフラコストでは遠く及ばず、2000年以降、稠密かつ低廉な労働力に魅かれ同国から中国へ生産移転(または優先的な直接投資行動)をした企業や工場も数多い。したがって、同国では中国を強力な競争相手国として「脅威」と見なす論調も多く散見できる。

かかる状況下、今年7月、メキシコのカルデロン大統領は北京を訪問し、胡錦涛国家主席や温家宝首相らと相次いで会談を行った。両国首脳は今後の投資・貿易取引のさらなる活性化を目的とした戦略的パートナーシップを長期に渡り実施することを決めた。産油国メキシコは中国にとって資源供給国として可能性を持つと同時に、輸出先としてその国内市場規模も大きい。一方、メキシコ側も中国からの投資増大を熱望している。

中国の中南米との経済関係の強化は、今後も一層続きそうである。


  1. 但し、近年、両国とも対米輸出の主力製品はこうした軽工業製品からハイテク製品(同部品)にシフトしている。そんな中、米国市場における両国製品 は依然として多くの分野で競合しているものの、機械機器(自動車や電子・電気機器等)のカテゴリーを仔細に分類すると、両国の対米輸出製品の新たな棲み分 けも進みつつあるという。詳細は、佐々木高成「米国市場における中国とメキシコの競合」『季刊 国際貿易と投資』(No. 72,国際貿易投資研究所,2008年)を参照されたい。
    尚、本稿の数値に関しては特にことわりがない限り、日本貿易振興機構HPのデータを参照した(2008年10月アクセス)。