社会経済の不安係数と弱者の権利保護

|中国

北京五輪後の中国社会経済はどうなるのか。単に経済成長の問題だけでなく、社会の安定という観点からすれば、農村の問題と都市下層労働者の問題が、もっとも重要な課題であるといえよう。

中国の社会階層は、(1)政治・経済のごく少数の精鋭による上層社会、(2)都市の国家・地方公務員、企業管理者、私営企業主、専門技術者などによる中間層社会、(3)大多数の農民、農民工、一般労働者・職員、商店主、失業者らによる下層社会によって形成されている。経済体制改革および市場経済化を進展させようとする過程において、必ずしも平等・公平、機会均等の経済政策はとられてこなかった。持てる者が、持たざる者から更なる略奪をし、このことが今日、ますます貧富の格差を拡大し、貧困人口(権利の貧困を含む)を増やしている(余少祥『弱者的権利-社会弱勢群体保護的法理研究』社会科学文献出版社、2008年、131~132頁)。

社会的弱者が、彼らの権利は剥奪されていると感じるようになると社会不安係数が高まり、暴力事件なども増える。農村では、農民の社会生活、経済利益がなおざりにされているという意識から、基層の執政に対する不満が高じ、群集性の事件が頻発しているということがある。

そこで、社会的弱者の権利を保護することは、中国経済の発展を安定的に維持し、社会不安を解消し、共産党が目指す和諧社会(調和のとれた社会)を実現する上で、現時点における最も重要な課題であるといえる。

2008年10月9日から12日までの間、北京において中国共産党第17期中央委員会第3回全体会議(3中全会)が開催された。同会議において、「農村改革・発展の推進の若干の問題に関する中共中央の決定」が審議され、採択された。

都市住民と農民との所得格差が、3.33対1と大きく、不平等が拡大している(新華社、2008年9月3日)。2020年までに農民1人当たりの収入を2008年比倍増させ、都市住民と農民の所得格差を是正するためにはどうすれば良いかを検討することが、3中全会における最大の議題であった。

今後、農村改革は、どのような方向に進むのか。弱者である農民の権利をどのように保護しようとするのか。山東〓州市では、全国に先駆けて農村改革の試みとして「土地合作社」という組織が形成されている。〓州市は、2008年初に「農村の土地請負経営権の移転をさらに推進し規模経営を迅速に発展させる意見」を発布した(経済参考報 2008年10月17日)。これは、農民に請負の移転、リース、互換、譲渡、株式化など多様な方式によって土地請負経営権を自由に移転できるようにし、現代的な農業、大規模農業を行おうという考え方である。

(* 〓は月+交)

都市部においては、失業者やレイオフされている労働者という弱者がいる。彼らは、40歳以上が大半であり、企業が採用しようとする場合の魅力的な労働力とはなりえていないので、再就職も難しいところ、社会保障制度の整備・充実が早急に図られなければならない。2007年12月の第10期全国人民代表大会第31回会議において社会保険法草案が提出され、第1回目の審議が行われた。2008年内に社会保険法が正式に制定されることになりそうである。この法により、労働者の生活の権利が保護され、互助救済における社会の公平が維持されることになると考えられる(鄭功成全人代常務委員・中国人民大学教授、中国人大網 http://www.npc.gov.cn/npc/zt/2007-12/29/content_1387569.htm)。

現時点において、景気浮揚のために大規模な減税と財政支出といった経済政策が短期的には必要であり、有効であろうが、長期的には貧富の格差を解消するための経済制度、政策および法の整備が必要になる。