中国経済の新しい段階

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米国発の国際通貨危機の渦中、11月に中国政府は、2010年末までに総額4兆元(約57兆円)超を投入する大型景気刺激策を発表した。この額はGDPの約16%に相当する。今や中国は、世界経済のためにも「責任大国」をアピールするまでになった。今年は北京オリンピック、再来年は上海万博。その狭間にあって、来年はもうひとふんばりしなければならない。中国がこれからどうなっていくのか、一時のマスコミ風評や無責任な論断を排して、じっくり腹をすえて観察しなければならない。

振り返ってみると、「貧しさに耐える社会主義」の毛沢東時代を唾棄し、「豊かさを求める社会主義」である「鄧小平モデル」の30年間、中国は確かに豊かになった。これは鄧小平の功績である。人々の考え方も多面的になり、ライフスタイルも多様化してきた。

なによりも改革開放の30年、中国経済の規模が巨大化した。さらに、国際経済との緊密化がますます強くなり、中国の経済力が世界経済に与えるインパクトも大きくなってきた。かつて中国は「世界の工場」と推奨され、WTO加盟後、国内の規制緩和が拡大して「世界の市場」へと移ってきた。最近では、BPO(ビジネスプロセス・アウトソーシング)の推進で「世界のオフィス」とも称されている。

しかし、「鄧小平モデル」は、“旗は共産主義、しゃべっていることは社会主義、やっていることは資本主義、地べたは封建主義”と揶揄できる。資源、エネルギーの大量消費型の産業構造を基礎に、政治の関与といびつな分配構造のため格差が増大し、社会的連帯感は喪失していった。社会主義市場経済の限界である。

何が達成できなかったのか。一つは“市民革命”が根付かなかった。中国共産党の歴史的特質、いわゆる「前衛党主義」によって、“遅れた民衆を助けてあげる、民衆は何々してもらう”、といった関係の中でしか社会的規範は進展しなかった。個人と国家の関係を対等にする基盤が形成されなかった。あと一つは、“産業革命”がなかった。労働に対する倫理性と合理性、公私峻別、企業のイノベーションが興らなかった。だから中国製品、企業のブランド化は遅れた。

中国の現状は、社会的矛盾の鬱積から経済危機の段階に入っていると思える。大きな構造的変化に直面し、景気も後退局面に入ってきた。だからこそ胡錦濤主席は「和諧社会(調和社会)」を強調し、現状を変えようとしている。「科学的発展観」というスローガンがうたわれているが、分かりやすく言えば、先富論の「鄧小平モデル」と決別し、「等しからざるを憂える社会主義」とも言える新段階、“胡錦濤モデル”を構築するということである。経済成長と社会発展のバランスが重視され、外需志向型から内需喚起に、高度経済成長から安定成長路線に転換していくであろう。