極東ロシアを視察して

|中国

6月初旬に、経済産業省とロシアNIS貿易会が主催する官民合同の極東ロシア経済ミッションに同行し、ウラジオストク、ナホトカ、ハバロフスクを訪問した。団長はロシアNIS貿易会会長で三菱重工業相談役の西岡喬氏で、総勢70名以上の大ミッションとなった。

本ミッションが派遣された背景は、本年5月来日のプーチン首相が提示した対日協力案件に応えるためである。2012年にウラジオストク金角湾入口に位置するルースキー島で開催されるAPECサミット、それに向けた吊橋など関連インフラの視察、2008年から始まった「2013年までの極東ザバイカル発展プログラム」の現場での理解、そして現地の産業、市場の考察等が目的であった。

私が参加したのはそれだけでない。前任の大学以来、「アジア経済論」という授業を持ち、そのなかで極東ロシアの経済、産業を教えてきた。“アジア経済”の中に極東ロシアとモンゴルも入れるべきだと以前から主張しており、図們江開発プロジェクトや環日本海経済圏構想も積極的に紹介してきた。多くの「アジア経済論」の書物には極東ロシアやモンゴルの解説が欠如しているが残念だ。当地へはソ連崩壊直前に日中東北開発協会が派遣した「大連・ハルピン・ハバロフスク」代表団(団長、故田淵節也野村證券会長)の事務局として訪問して以来、18年ぶりである。

極東ロシアは、比類なき豊富な鉱産物(石油、天然ガスなど)、森林、水産資源を有している。しかし、すべての基幹産業は中央政府に支配され、そのため現地住民の中央に対する依存心が強い。近年の原油価格高騰に支えられて、一層おこぼれをもらうといった意識が助長されている。こういった事情だからこそ、極東ロシアの発展には中国の改革・開放の真髄が活かされるのではないか。

第1に中央権限の下放。地方行政府の権限強化には各種徴税、許認可の権限、企業優遇措置などが含まれる。中古乗用車に高率の関税を課すことは、極東ロシア地方にとってメリットはない。「上に政策あれば、下に対策あり」と豪語した中国の地方政府が持つバイタリティーを見習うべきだ。第2は中長期の産業政策の策定が肝要。商売はあっても産業政策の裏づけが欠落している。アジアの労働力の活用、産業インフラの整備、地元資源を活かした家具、木材産業の再建、高付加価値の水産加工、石化プラントなどである。第3は企業経営者の人材養成が急務で、第4は法治主義の徹底。そして最後はアジア諸国との本格的連携が問われている。2012年のAPECがその契機なることを期待したい。いまこそ極東ロシアはモスクワだけに向くのでなく、アジア・太平洋に眼光をすえるべきだろう。