ロシア極東開発の行方と日本の対応

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9月1日、プーチン首相がウラジオストックを訪問し、ロシア政府の極東重視姿勢を鮮明にした。

ウラジオストックでの開催が決まっている2012年APECサミット関連インフラ建設が当初計画より遅れており、開催に地元を含め疑問の声が出ていた。首相自らが現地を訪問し、道路、橋、上下水道等のインフラ整備や国際空港、国際会議場、プレスセンター、ホテルなど、開催国にふさわしい施設建設を後押しするのが目的だった。障害となっていた建設予定地ルースキー島の軍関連施設の即時撤去も指示している。これらのAPEC関連施設はサミット後、10万人規模の極東連邦大学への転用が予定されており、実現すればウラジオストックは一大学術パークになるだろう。これまで、予定通りの建設に疑問を抱いてきた関係者には心強い今回の首相の極東訪問だったに違いない。

もう一つの極東での大規模ブロジェクト、西シベリアからの原油輸送の為の太平洋パイプライン建設とこれに関連したコズミノ港での石油化学プラントの建設も本格的化している。プーチン首相は今回コズミノ港も視察している。

これら2つの大型プロジェクトに投下される資金は、連邦政府が資材高騰を考慮し予算の倍増を決定、民間資金を合わせれば1.5兆円を超える。2013年までの極東・ザバイカル地域の経済発展連邦プログラムも始動し始めた。9月23日からはメドベージェフ大統領もカムチャッカを皮切りに精力的に極東各地の視察を開始、ウラジオストック訪問との報道もある。とかく政府の計画には懐疑的なロシア人だが、政府が漸く極東にも目を向け始めた事を実感しているとの声を聞く様になった。

8月初めのグルジア紛争を契機とした欧米とロシアの対立、その後のロシアによる南オセチア、アブハジアの独立承認は、G8構成国の中でロシアを孤立させた。ロシアにエネルギーの多くを依存しているEU諸国が経済制裁をちらつかせ、ロシアへの圧力を強める中、プーチン首相のウラジオストック訪問は、極東重視をアピールする事で欧米へのけん制姿勢を示そうとしているようにも見える。

日本のすぐ隣で進んでいるこのような大規模プロジェクトに日本はどの様に関わっていくべきなのか。日本政府のロシア極東・東シベリアとの関係強化は、“極東・東シベリア地域における日ロ間協力強化に関するイニシアティブ”として、2007年6月ハイリンゲンダムサミットの際に当時の安倍首相からプーチン大統領に提案され、エネルギー、輸送、通信等8つの分野での協力関係が進んでいる。これに沿った形で日本海を挟んだ地方自治体のロシアへの積極的アプローチも目立つようになってきている。ロシア極東のインフラ整備や住宅建設用の資機材や日本の技術輸出が増加するだろう。

プーチン首相は、最近ソチで開催された経済フォーラムにて、グルジア紛争以後の米ロの軍拡競争拡大が、イノベーショナルな産業の多様化を通じたロシア経済の構造転換推進にブレーキをかける可能性に言及した。アジア太平洋諸国との連携強化を打ち出し、本格的極東開発に向け動きだしたロシアとの経済協力促進は重要だ。ロシアを孤立へ追いやる米国主導の新冷戦の構図が、中国や韓国が控える東アジアにおける日ロ経済関係強化に影響を与える事のないことを望む。