ロシア経済構造転換へのチャンス

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2008年大晦日、ロシアの人々はどのような思いで年を越したのでしょうか。世論調査によれば、1年前25%の国民が良い年だったと評価したのに対して10%の国民しかそうした思いを持てなかったと回答している。

ソ連邦崩壊後の大混乱とアジア金融危機の影響を受け1998年にはどん底経済を経験したロシアだが、その後の10年でめざましい経済発展を果たした。その原動力はプーチン大統領の登場と資源エネルギー価格の高騰だった。GDPの伸びは年平均7%を維持、欧米に対する多額の累積債務を返済し、世界第3位の外貨準備高を誇るまでに成長した。世界が大国ロシアの復活に注目した。モスクワ等の都市部だけでなく、大きな格差があるとは言え極東ロシアに住むロシア人も含めて生活レベルは一変した。

そこに降ってわいた様な米国に端を発し世界中を巻き込んだ経済停滞は、市場経済化を推進しグローバル経済社会の一員として存在感を示しつつあったロシア経済にも深刻な影響を与えることになった。ロシア政府は矢継ぎ早に対策を講じてきた。もともと脆弱だった金融市場への資金供給、株価高騰を武器に海外から膨大な融資を受けて来た大企業の債務返済肩代わり、法人税減税、ルーブル通貨下落阻止の為の買い支え、自動車等個別産業分野への支援等だ。しかし直近では石油価格41ドル,ルーブル為替R35/$、インフレ13%を前提とした予算の見直しを余儀なくされ、財政の赤字転落はさけられない様だ。ロシア経済のハードランニングを予想する報道さえ見受けられる。

だが本当に悲観的な側面しか見いだせないのだろうか。確かに今後数年は苦しい経済運営は必至だろう。しかしこの危機は、原油価格の高騰に甘んじ、これまでかけ声に終わって来たエネルギー輸出に依存した経済体質を、多様化した経済構造へ転換する絶好のチャンスでもある。金融危機で傷ついた大企業の資産の再配分に終始する事なく、中小企業を巻き込んだイノベーショナルな産業を本格的に立ち上げる事だ。産業振興を託された“ロステクノロジー”や“ロスナノ”等の国営会社の責任も大きい。

極東では、日本からの中古車輸入事業の将来不安を見越し、新規事業を立ち上げる動きや、中国での加工をロシアに取り込もうとする中小企業も出て来ている。社会不安を取り除く為の年金や失業者対策、官僚主義や利権行使による非効率排除に向けた汚職対策等を推進しつつ、具体的な中小企業支援に真剣に取り組む時なのではないか。

世界は米国による一極支配が終焉し、G8からG20の時代に入った。極端な保護主義や大国主義に陥らず、グローバル経済の一極としての役割を果たせば、エネルギー、食料、鉱物、人材等の資源大国としての強みを発揮し大きな存在であり続ける筈だ。

メドベージェフ大統領は昨年末自ら出席した2008年を締めくくる閣議で、大統領府、政府、議会等権力の一体性と安定の重要性を強調した。もともとロシア人は危機には強い国民だ。政治的安定を背景に一から経済の立て直しを見事に果たしてくれる事を期待する。