日ロ農業協力の可能性

|ロシア

極東ハバロフスクで開催されたロシア-EU首脳サミットでは、エネルギー安定供給問題を巡って交渉が不調に終わった様だが、ロシアのアジア太平洋地域への統合プロセスは着実に進んでいる。

日ロ関係ではサハリンからの液化天然ガスの対日供給が開始され、5月11日にはプーチン首相が4年ぶりに来日、エネルギー(炭化水素や原子力)、省エネ、運輸、情報通信、ナノテク、宇宙関連等多岐に亘る日ロ協力の可能性について話し合いが行われた。ロシア側からは極東や東シベリアだけでなく、ロシア全体での180件に及ぶプロジェクトリストが日本側に提示されたとされる。日本に向けるロシアの視線は熱い。

日ロの経済関係でこれまであまり話題になっていない分野の一つに農業協力がある。昨年ロシアはソ連邦時代を別として初めて1億トンを超える穀物を生産し、今年も順調な収穫が予想されている。地中海諸国や中近東等への輸出には限度がありアジア諸国とりわけ対日輸出への関心が高まっている。昨年洞爺湖サミットでのメドベージェフ大統領提案が実現して開催されるサンクトペテルブルグでの世界穀物フォーラムには40カ国以上から参加が予定されており、ロシアは農業分野でもリーダーシップを発揮しようとしている。

一方食料自給率が40%を割り込んでいる日本は今後も海外からの農産物の輸入に頼らざるを得ず、大豆、小麦、トウモロコシ(飼料用)等の輸入においては供給国の多様化が課題になっている。世界の人口増加の中で食料不足は確実視され、海外からの安定供給対策は重要な国策となる。さる4月21日、外務省、農林水産省や関連する省庁が参加して、“食料安全保障の為の海外投資促進に関する会議”が開催された。この会議でロシアがどの様に位置づけされているか興味深い。

政府が関与する主要穀物輸入とは別に、野菜類等は中国からの輸入依存度が高く中国の水不足や土壌の汚染問題等、食の安全の観点からもロシア、特に沿海地方やアムール州等にもっと目を向けてはどうだろう。

ロシアの農業分野へは欧米穀物メジャーが積極的に進出しているが、極東における隣国中国や韓国のアプローチは日本より積極的で先行している様に見える。韓国大手が数十億円規模の資金を投下しロシアの農業法人株を取得する形で農耕地を確保、トウモロコシや大豆生産に動いているとの最近の報道もあった。中国と隣接するアムール州や沿海地方などでは、合法、非合法含めて多くの中国人が住着き何年も前から農業に従事しているし、低価格を武器に中国製農業機械等のロシア向け輸出も行われている。

連邦政府の農業に関する国家優先プログラムを受けて、極東各州は中期農業振興プログラムを実行に移しているが、農業設備の老朽化問題を抱え、農産物価格の下落の中で銀行からの融資は滞り、順調に進んでいるとは云えない。

日ロ農業協力はロシアが現在生産している農産物を単に輸入する事だけ考えれば限界がある。日本の栽培技術、種子開発技術、食品加工技術等を活用し、日本の農業技術者を派遣する等、必要とする品質や数量を確保する為の多角的な関係構築が必要だ。穀物の安定供給の為には極東港での輸出ターミナル建設も必要になるだろう。双方が相手の存在を必要とする互恵関係に持ってゆくには時間もかかるだろう。

日本は国産食料を増やす努力は当然としても、農業労働者不足の問題は簡単に解決できない。ロシアとの農業協力に積極的に動き出し、日ロ双方がメリットを享受するだけでなく、ひいては世界の食料供給にも貢献する時代がきているのではなかろうか。