モスクワ資本に呑み込まれるロシア極東の空

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ロシア極東の航空会社をめぐって、アエロフロートと国営公団「ロステフナロギー」が激しい争奪戦を繰り広げている。アエロフロートにほぼ決まりかけていた譲渡先は、ダリアヴィアの倒産で、ロステフナロギーに再びチャンスがめぐってくるという、まったく先の読めない展開となっている。他の地域の航空会社を巻き込んだ大規模な再編に発展する可能性さえある。

ただ、現時点ではっきり言えることは、ダリアヴィア(ハバロフスク地方)、ウラジオストク航空(沿海地方)、サハリン航空(サハリン州)の3社が単独で生き残ることは難しく、遅かれ早かれ巨大なモスクワ資本の傘下に入るということだ。

モスクワ資本がロシア極東の航空会社に関心をもつ理由は、航空会社がもつ機材と日本や韓国などとの間にもつ国際定期便にある。比較的経営規模の大きいロシア極東の航空会社を買収できれば、アエロフロートに対抗する航空会社の設立を目指すロステフナロギーは、航空資産を一挙に手に入れることができる。アジア・太平洋地域への路線強化を打ち出しているアエロフロートにとっても、3社のもつ国際線網は喉から手が出るほど欲しい資産である。

そこで思い出されるのが極東港湾へのモスクワ資本の進出である。モスクワ資本による極東港湾への進出は2003年ごろより始まり、現在では主要港湾のすべてがモスクワ資本の傘下にある。その結果、極東港湾に何がもたらされたかというと、貨物量は増えたが、港湾インフラの発展という問題がなおざりにされた。貨物の中身もモスクワ資本の都合のよい商品に偏り、結局のところ、極東港湾はモスクワ資本にとって、自社の商品を輸出するための出口でしかなかった。例えば、沿海地方南部にあるポシェト港は、鉄鋼グループ「メチェル」の進出により、石炭の専用港になってしまった。そこには中長期的な戦略や「極東の発展のため」という考えはまったくない。あるのは自社の利益だけである。

航空と港湾は異なるので、一概には言うことはできないが、ロシア極東の航空会社がモスクワ資本の傘下に入ることになれば、割高な運賃の引き下げや老朽化した機材の更新、ネットワーク・サービスの充実などが期待される一方、モスクワ中心の運航体制の下、これまでの地域密着型の航空輸送体制が切り捨てられる恐れがある。経営が傾いた場合には、人口の少ないロシア極東のローカル線や国際線が最初に廃止されるとも限らない。

港湾と違って、航空会社の再編は国家主導で進んでいる。ダリアヴィアの破産には航空燃料の高騰など様々な原因があるが、最大の原因は何と言っても、国営企業特有の環境変化に迅速に対応し難い経営体質とのその非効率な経営にある。アエロフロートにしろ、ロステフナロギーにしろ、結局は国営企業である。規模が大きくなればなるほど、環境変化に迅速に対応できなくなり、非効率な部門が肥大化していくのは国営セクターの常である。ロシアは同じ轍を踏もうとしている。そうと思えてならないのは私だけだろうか。