中古車ビジネスと極東開発

|ロシア

空っぽになっていく駐車場を眺めて、ロシア極東の経済を支えてきた中古車ビジネスはつくづく大きかったな、と思う。2009年1月末、ウラジオストク。10階建ての保税倉庫の中の車が日々減っていくのを見ながら、関税引き上げの影響の大きさを感じた。

ロシア政府は世界的な景気悪化を受けて、経営悪化に直面する国内自動車産業を保護するため、外国製自動車にかける輸入関税を大幅に引き上げた。引き上げ後、日本からロシア極東への中古車輸入はほぼ完全にストップした。ロシア極東税関によると、ウラジオストクに輸入される車は1日あたり約50台と、引き上げ前の18分の1に激減した。

ロシア極東の中古車ビジネスは拡大に次ぐ拡大だった。昨年までの好景気の中で、日本から極東を中心にロシアに輸出された中古車は、乗用車だけで、じつに51.8万台(2008年)に達した。2001年と比べても約23倍に拡大し、対ロ輸出の約20%を占めるまでになった。

中古車ビジネスの停止は、ロシア極東だけで約10万人ともいわれる「すそ野」を直撃している。毎年のように噂になっていた関税引き上げは予想できたとしても、急激な円高とロシア経済の急速な悪化は、誰も予測できなかった。今年後半にはロシア経済の回復とともに、輸入が回復するとの見方もあるが、トリプルパンチ(円高ルーブル安、景気悪化、関税引き上げ)の長期化を覚悟する業者もいる。突然の事態に、様子見を決め込むしかないというのが正直なところだ。

中古車ビジネスは、ソ連解体後にモスクワからの支援がストップし、木材や水産業などの主要産業が壊滅的な打撃を受ける中で、極東の人たちが自ら手で見つけた新しい産業だった。それは次第に大きくなり、地域経済を支えるまでになった。それをモスクワがつぶしにかかってきた。ウラジオストクなどロシア極東の各地では、関税引き上げの撤回を求める抗議行動が起きたが、彼らが反発する気持ちも理解できる。

ロシア政府は一昨年(2007年)、新たな極東開発プログラムを策定し、極東重視を打ち出した。輸入関税の引き上げはその矢先の出来事だった。口先では極東に住む人々の生活水準を上げるとか、極東地域を欧州並みにするとか、すばらしいことを言いつつも、結局のところ、極東のことなんて理解していない。ロシア極東に住む人々の気持ちを代弁すればそんなところであろう。

極東開発への熱も一時期と比べて失われているように思う。今までの極東プログラムは「絵に描いた餅」だったが、今回は資金の裏づけもあり、かなり本気という印象があった。しかし、急速な経済悪化の前に、極東開発も無傷ではいられないようだ。早速、予算削減令がでているときく。極東プログラムが採択された日、フラトコフ首相(当時)は中央官僚を前に、ロシア極東を身を持って知るため、同地域で数年間働くよう指示したが、今ほど、この言葉が重要な意味をもつ時はない。ロシアの姿勢が問われている。