日本企業は存在感を示せ

|ロシア

経済産業省とロシアNIS貿易会が合同で5月末から6月初めにかけて、70名以上の企業関係者からなる代表団をロシア極東に派遣した。筆者はその事務方として参加した。

ロシア極東は、政府が2年前に採択したプログラムにもとづき、大規模な再開発の中にある。一部プロジェクトはすでに着工し、その実現を予感させる。

世界的な経済危機の影響で、ロシア経済は落ち込んでいるものの、2012年のウラジオストクでのAPECサミットに向けて、ロシア極東を再開発するという国家の方針に変更はない。中央政府からの資金的な裏づけもあり、急ピッチで工事が進んでいくとみていいだろう。

ロシア政府は極東開発で、日本に協力を要請している。首脳会談の場でも度々取り上げられている。今回、日本として積極的に協力していくつもりであることをロシア側に直接、しかも大企業のトップクラスから伝えられた意義は大きい。

一部プロジェクトにはすでに日本企業が参加している。本格的な参加となれば、日本・ロシア極東の関係を新たなステージに引き上げることになる。

ただ残念なのは、ロシア極東における日本のプレゼンスがここ数年で低下していることだ。ロシア側は、代表団を歓迎してくれたものの、「何しに来たの」、「また情報収集しに来たの」とあからさまに嫌悪感を示す人もいた。日ロ双方とも前向きな姿勢を強調したが、具体的な展望が開けているわけではないのもまた事実だ。

日本とロシア極東の経済関係は日ロ経済関係と同様、ここ数年で大きく伸びた。貿易高は2002年の9.7億ドルから2008年には約71億ドルと、6年間で7倍以上に伸びた。ロシア極東にとって、日本は最大の貿易相手国である。投資はオランダ、英国に次いで3番目(2008年)である。しかし、その中身をみると、貿易は中古車、投資はサハリン沖での石油・天然ガス開発に偏っている。

そうこうしているうちに、ロシア極東で存在感を高めているのが中国と韓国である。中国は国境が陸続きであることを利用して、人とモノの両面で行き来が活発である。貿易主体であった経済関係は、水産や木材企業の買収など投資へシフトしている。韓国も中小から大企業まで積極的に進出している。日本は中古車だけで盛り上がり、「顔」がすっかり見えなくなってしまった。存在感がなくなったといってもよい。

経済協力をめぐる温度差も指摘できる。ロシア側は日本に協力を求める一方で、「どうせ出てこないだろう」とタカをくくっているところがある。日本側も、新興国マーケットに商機があると言いつつも、極東マーケットには消極的だ。極東ビジネスは「儲からない」、「政府保証などのスキームがないと出られない」という固定観念がある。日本とロシア極東との間でミスマッチングが起きている。

これを解消するにはどうしたらよいであろうか。特効薬があるわけではないが、まずは外に出ることである。残念なことに、ロシア極東に進出した日本企業の数は経済関係が拡大する一方で、ここ数年来ほぼ変わらない。日本は内向きすぎる。それを変える必要がある。それを変えなければ、いくら経済協力といっても、机上の空論、絵に描いた餅に終わってしまうであろう。

「リスクを負わない人々」。この言葉は数年前、ウラジオストクの新聞記者が日本に関する記事のタイトルにつけたものである。その時はひどいタイトルをつけるなあと思ったが、今聞くと、納得できる部分がある。