世界不況とウラン

|モンゴル

世界的な経済・金融危機の影響

2008年後半より米国のサブプライム・ローンに始まる世界的な経済・金融危機は、モンゴル最大の輸出品目である銅(copper)の国際価格の下落を加速化させた。結果的にモンゴル政府は、IMF(国際通貨基金)へ金融支援を求めることになった。

この経緯について、関係筋の話によれば、モンゴル政府(財務省)は当初、中国から金融支援(ローン)を受けようとしたらしい。しかしモンゴル外務省が「ロシア・中国とのバランスが崩れる」と反発したという。やむなくIMFにミッションを派遣して金融支援の要請を打診したところ、中央銀行による国内政策金利の引き上げや2009年GDP比の財政赤字を6%以下に抑制することなど、幾つかの厳しい条件を突きつけられた(現地UBpost紙2009/04/9)。

結局、モンゴル政府がこれらの条件を受け入れたことで、3月14日の金融支援会合でIMFは約2億2000万ドルをモンゴル政府へ借款(ローン)で拠出するとともに、世界銀行、ADBに加えて日本政府も2年間で5000万ドル(約50億円)の金融支援を約束した。なお日本政府は、これとは別にモンゴル(ウランバートル)第二国際空港の建設に約280億円を拠出する約束もしている。

モンゴルのバヤル首相は、こうした日本政府からの支援に感謝の意を表す目的で近々に日本を訪れる予定である。

ウランを巡る各国の思惑

他方、地下資源に対する世界的な需要は長期的に見れば高まる一方である。二酸化炭素(CO2)を排出しない技術開発に加えて、原子力エネルギー(発電所建設)への依存は、インドや中国など新興諸国も含めて急速に高まっていくと見られる。旧ソビエトの衛星国家時代に軍事目的でソ連によって開発されたモンゴル国内のウラン鉱は、1991年のソビエト崩壊以降も秘密のベールに包まれていた(ちなみに、モンゴル国立大学にもウラン鉱を処理するソビエト時代の原子力研究所に10年以上も勤務した経験のある研究者も多いと聞く)。

今日でも、採掘されたウラン鉱石の大半はロシアへ鉄道輸送されて、ロシア国内で精錬・加工されているものと見られる。周知のように京都議定書の締約国間では、地球温暖化の間接的な原因が二酸化炭素(CO2)にあるとして、この削減を各国に求めている。CO2を排出しないクリーンなエネルギー源の一つとして、モンゴル国内に埋蔵されているウランに対する日本を含む近隣各国の関心は高まる一方である。関係筋の話では、モンゴル政府がウラン鉱の採掘権の売買取引を一般公開入札にした場合、インド、中国、韓国など近隣諸国がこぞって応札するものと見られている(すでに一部の採掘権はカナダ企業が保有している)。これらに対処するために、ロシア、モンゴル両国はそれぞれに窓口となる国営企業を立ち上げた。2009年3月17日、ロシア側が「Rosatom」、モンゴル側が「MonAtom」と称する両国営企業が、ジョイント・ベンチャーによってウランの採掘・生産を行うとする原子力協力協定を締結している(現地UBpost紙2009/03/19)。関連してロシアのプーチン首相は、モンゴルの農業開発支援の目的で3億ドルの借款をロシア農業銀行経由で供与する約束をしている(これらは全てロシア製の農業機械・穀物・肥料などの購入に充てられるものと見られる)。なおエンフバヤル・モンゴル大統領はすでに2007年2月22日、モンゴルにおける原子力発電所の建設・操業およびウラン採掘につき、フランス国営の原子力発電事業社“AREVAグループ”との間で話し合いを行い、シラク大統領ともこの件で協議している(paris@afxnews.com,2007/2/22)。

さて、モンゴル政府内には、長年に亘ってモンゴルの経済発展を支援してくれている日本へもウラン採掘権を与えるべきであるとの声があると聞く。これが実現すれば、モンゴルのウランが我が国経済の根幹であるエネルギー開発に大きく貢献することになる。

他方、今の日本の世論は原子力エネルギーの利用拡大にやや後ろ向きである。2009年6月に予定されているバヤル首相の来日を契機に、このあたりが今後の焦点の一つになるに違いない。