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グローバル金融経済危機から何を学んだか?: 国際地域協力を基礎にした経済発展システム構築に向けた中国の新たな政策展開

|中国

各種報道によると、昨年から今年にかけて中国は国境を跨ぐ国際地域経済協力、すなわち、国境国際地域経済圏International Cross Border Economic Region構築に向けて新たな政策を展開している。

「綏芬河総合保税区」(2009年4月、国務院批准)の設置。面積1.8平方km。地理的優位性を生かし、中、露、日、韓の陸海連絡運送ルートを建設し、東北アジアの国際貿易センター及び総合的輸出入商品加工区として発展させることを目指している。基礎施設が完成、9社の進出協定調印という報道がなされている(新華網黒龍江頻道2010年5月7日、NPO法人新潟県日中友好協会「中国黒龍江省社会経済情勢 DATA BASE」)。

中国図們江地域開発協力規画綱要―長春・吉林・図們開発開放先導区―」(2009年8月、国務院批准、2009年11月、正式批准・公表)の制定。計画対象を琿春から長春までの7.3万km2、人口1,090万人の地域に拡大したこと、対象地域に先行試行権を認め、対外開放の模索・探求の試みを奨励していることが新たな内容である。都市規模の小ささによる産業発展や国際協力の制約という問題を克服し、対外交流と経済技術協力を促進し、図們江地域開発協力のボトルネックである制度的障害の打破が期待されている。具体的項目として、琿春税関国際商品貿易センター、中ロ韓日陸海連絡輸送など国際協力インフラ整備、国境を超える経済協力区と国際産業協力パーク建設、図們江地域各国との環境、教育、文化、観光等の交流と協力の全面的強化などが構想されており、2020年までに計画対象地域の経済規模を4倍化し、全国の先進水準に到達させるという目標が設定されている(振興東北網http://www.chinaneast.gov.cn、 2009年11月16日)。

同計画は、中国の計画であるが、計画期間の10年延長(2015年まで)、並びに開発の対象を大図們江地域(中国東北三省・内モンゴル自治区、朝鮮の羅先経済貿易地帯、モンゴル東部、韓国東部沿海都市、ロシア沿海地方の一部)に拡大するという2005年9月の関係5カ国による図們江開発「諮問委員会」の決定に沿った内容となっている。

「東北地区等老工業基地振興戦略の一層の実施に関する若干の意見」(2009年9月、国務院、国発33号)の発表。2009年8月、温家宝総理の主宰による会議が開催され(朱永浩、ERINA REPORT Vol. 91 2010 JANUARY、 pp.94-95)、2004年以来の戦略の成果の上に、経済構造の改善と現代産業体系確立のための企業再編などの課題が提起されている。その締めくくりの項目として、対外開放をさらに拡大することが挙げられ、遼寧沿海経済地帯建設とともに、上記の長春・吉林・図們開発開放先導区および綏芬河総合保税区の建設、中ロ地域協力発展基金設置の研究などの項目が明記されている(振興東北網、2009年09月11日)。

「中国東北とロシア極東・東シベリア地域の協力プログラム」が胡錦涛主席とメドベージェフ大統領により署名され(2009年9月)、2018年までの10年間に205件の国境地帯共同プロジェクトを実施することが確認された。その最初のプロジェクトとして、ロシア政府地域発展省が、アムール川(黒龍江)鉄道橋、石炭採掘、工業団地、観光経済特区など8件、総投資額3,766億ルーブル(約120億ドル余、うち12%はロシアの財政予算、その他の大部分は中ロ両国の企業からの投資を予定)を承認している(2010年6月26日「黒龍江日報」、ERINA「北東アジアウォッチ」No.141、2010年7月9日)。

東北以外でも、従来からの雲南省、広西チアン族自治区のメコン川地域開発(GMS)プログラムに加えて、2010年5月の中国共産党中央と政府の会議において、新疆ウイグル自治区カシュガルに経済特区を建設し、中央アジア、南アジアとの国境を越える地域協力の拠点を形成することが決定されている(聯合早報2010年5月23日、「中国最新情報」 No.509、2010年6月8日、http://www.bizchina.jp)。

経済格差を是正し、小康社会を設立するという国家目標を達成する重要政策として、西部大開発、東北振興の地域振興戦略が実施され、両地域は全国平均あるいはそれを上回る経済成長率を遂げてきた。しかし、欧米主導のグローバリゼーションの波に乗った長江デルタ地域、珠江デルタ地域はそれ以上の成長を遂げ、格差は縮小していない。こうした国内事情と、2008年以降のグローバル金融経済危機の展開を背景に、中国は国境周辺のマイクロ国際リージョンを含むリージョナリズム(国際地域協力)の強化に向けて、新たな政策展開を進めている。それは、重複投資、過剰投資の危険性をはらみながらも、リージョナリズムとグローバリズムの均衡のとれた発展、前者を基礎にした後者の発展という中国の新たな経済発展システムを構築する試みである。国境問題解決等を背景にしたロシアとの関係改善(既述に加え、面積を2分した大ウスリー島[中国名:黒瞎子島]の中ロ共同開発なども挙げられる)もその推進条件となっている。

1997~98年アジア通貨経済危機を機に、中国は東アジア地域協力の推進に向けて政策転換したが、それから10年経った今、新たな世界経済危機を踏まえて、地域協力推進政策をもう一段、高い段階に引き上げた。この間の、中国人民元弾力化(2010年6月19日、中国人民銀行声明)、すなわち、米ドルとの固定的為替レート政策の放棄も、その一つの表現として位置づけることができる。

グローバル金融経済危機の中で日本以上の経済の落ち込みを見せたロシアは、中国の政策展開と歩調を合わせつつあるように見える。日本では、東アジア共同体を掲げた鳩山由起夫首相がわずか9ケ月で退陣し、菅直人新首相がその課題を継承した。日本がグローバル金融経済危機から何を学び、20年間の低成長を克服するためのどのような政策を展開するのか、中国、アジア並びに世界が注目している。