いよいよ始まった中国・次世代自動車の個人購入優遇措置

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次世代自動車(プラグインハイブリッド車〔PHEV〕、電気自動車〔EV〕等)の個人向け購入者への補助金制度(「個人購入の新エネルギー自動車財政補助資金管理暫定弁法」財政部、科学技術部、工業・情報部、国家発展・改革委員会)が、6月1日から開始された。

公共交通・機関に対する補助金制度(「省エネルギー・新エネルギー車普及財政補助資金管理暫定弁法」財政部、科学技術部)は昨年2月から開始されたが、個人購入への制度・運用開始はいつかとのニュースが長らく飛び交っていた。

いよいよ始まった個人向け購入者への補助金制度であるが、その効果は「限定的」との見方が各メーカートップから示されている。例えば、GM中国のケビン・ウェール総裁兼総経理は、「5都市」との規定に、次世代自動車の普及を促進する効果は非常に限られていると指摘する。また、PHEV・EVで注目されるBYD自動車(比亜迪汽車)の王建均副総経理も、普及には車輌の「価格」以外に、設備や消費者の信頼などの多くの課題があると指摘している。

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この制度の内容(図表参照)をみると、「テストケース」という前置きがあるにせよ、克服すべき課題も多く残っていることが確認できる。まず、ウェール総裁が指摘する通り、地域が限定されていることで、次世代自動車普及の促進効果は限定的で、かつ今後も第2期、3期の実施都市が増えるかどうかは定かでない。消費者への直接的な利益を確保し、個人ユーザーの拡大を通じて次世代自動車の普及を促すというものであれば、限定都市以外の消費者の不公平感は出ないだろうか。また、消費者の利益を考えた場合でも、現行では補助金の支給方法がメーカー経由で間接的に得られるものとなっている。このため、例えば人気の高い次世代自動車を販売するディーラーでのプレミアム価格はどう処理されるのか、その分が差し引かれて消費者の得る利益は政府の意図する額には達しない恐れがある。さらに、支給対象も「乗用車」という限定であり、都市化が進む中国では小型トラック、バス等の輸送用車輌も増えており、この分野でも同様な試みによって環境対応車を増やす必要はないだろうか(商用車は上記の09年2月からのモデル・ケースのみ適用)。さらにいえば、山東省を代表とする簡易式のEV(ローエンド)が対象外となっているが、そもそもローカルメーカーのEVは販売価格が安く(2.5-3.5万元)、都市部郊外や農村部での所得増によってコミュータ市場が拡大する可能性が高く、いわば部品単体の安さや量産のノウハウ等の中国の「強み」の部分をどう活かすかが示されていない。翻って、現在の日本メーカーの「強み」であるハイブリッド車(HV)は対象外となったが、これはHVとは限定しない1.6リッター以下乗用車への補助(「『省エネルギー製品の国民支援プロジェクト』省エネルギー自動車普及実施細則」、財政部、工業・情報部、国家発展・改革委員会、2010年5月26日。以下参照)で若干ながらの補助が出ることとなった。しかし、燃費効率が基準となった規定のため、アイドリング・ストップ等の中国の地場メーカーも実用化を進めている機能で企業間の技術開発競争を促す狙いがあるかどうかは、疑問が残る。

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いずれにおいても、中国の自動車産業における環境対応策は緒に付いたばかりであり、今後はその全体像としての「新エネルギー自動車産業発展計画」や「自動車産業第12次五カ年計画」(および付随文書、細則)等で示される包括的なロードマップ、具体的な支援策等が待たれる。とはいえ、その検討は既に開始されており、上記のHVの例でもみてきた通り、日本はグローバル・トップ・マーケットの中国が目指す方向を注視しつつ、標準化の策定や基準作りにビジネスベースでいかに参入できるか等、官民あげて早急な取り組みを検討、実行していかなければならない。