中国で始まるGMの再生、トヨタを超えたBYD-『国富論』の中国

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上海市の交通渋滞はかつてのバンコクやマニラを思いだす。5月1日開催の万博に向けて地下鉄などインフラ建設が続いていることが渋滞を悪化させている。上海浦東国際空港からの交通手段で、上海人のアドバイスは、自動車移動ではなくリニアモーターカーと地下鉄の乗り継ぎだった。

3月24日、上海の商業地地区のひとつ南京路近くの大型書店を訪問すると、アダムスミスの『国富論』の中国語版が山積みされていた。注目される経済理論書が、政府より市場の役割を重視する古典派経済学の著書というのは、中国人、とりわけ成長の恩恵をすでに享受した上海人のニーズを象徴している。『蟹工船』が2008年のベストセラーとなり、「社会主義化する」とさえ論評される日本とは対照的だ。過去20年を平均すれば、ゼロに近い名目成長率の日本と、10%以上の中国では、成長速度、変化の速度が明らかに違う。このため経済論争も、両国では日本のデフレ脱却に対して、中国はインフレ抑制と好対照だ。注目される書籍にも反映しているのだろうか。

変化を続ける中国経済の動向分析は大きく分けて二つある。伝統的には、中央政府が主導するフレームワークに着目する方法がある。もうひとつは、国有企業、外資系企業、そして民営企業と、企業活動に焦点を当てる方法だ。中国の地方政府の役割は、幹部人事を除いて日本以上に権限があると考えておきたい。現状の権限から見れば、残念ながら、日本の都道府県は、中国の省や直轄市の地方政府と対等な関係にはなりにくい。地域間交流促進には、道州制、経済特区など制度改革も必要条件である。さらに同じ省や市内でも、都市と農村と安定的な居住先を制約しうる戸籍制度が残っている。このため、上記二つの見方のなかで、地方政府を重要なアクターとして考察することも重要になる。より詳細な実態を把握するには、地方経済に絞った分析も不可欠になっている。

では、経営分析的手法はどうだろうか。BtoBとBtoC。企業間取引と消費者向け取引を比べれば、市場原理が機能しやすいのは明らかに後者だ。なお中国の場合、BtoG、企業と政府との取引も重要な視点である。地方政府が株式保有などを通じて経営権を持つ国有企業との合弁会社設立などはBtoGと位置づける。

さて、中国はマクロ経済で、10年先にも米国の経済規模を抜く可能性がある。さらにその中国で、個人向けの製品販売、消費サービスでは、数百万、数千万、億単位の新規市場が期待される。海外企業の関心や中国政府の政策も、世界の工場から世界の市場へ大きく転換している。社会主義市場経済を標榜する中国で、より資本主義的な状況はBtoC、消費者向け市場で起きることになる。

中国の自動車市場は2009年、米国を抜いて世界一となった。中国汽車工業協会は大手10社の「中国乗用車メーカー」販売台数を毎月公表する。2010年2月累計で1位が上汽通用五菱、2位が重慶長安、3位が上海通用だ。米GM(通用)系2社が上位。それに続くのが、独フォルクスワーゲン系で4位が上海大衆、5位が一汽大衆だ。民営企業の奇瑞は東風日産を、同BYD(比亜迪)は一汽トヨタをそれぞれ販売台数で上回り、BYDはハイブリッド車、電気自動車の販売も進めている。ただ10社シェアは60%に満たない。市場化の深度を測るうえで、中国自動車産業の定点観測は欠かせない。