中国には二つの市場がある-ピアノ製造、販売も世界一

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ジーンズ姿の女性がひとりで、アコースティックギターの弾き語りをしていた。7月中旬、中国内陸部の拠点都市、武漢市の観光地に通じる地下道だった。武漢市内の長江沿岸、旧租界の伝統建築に入居するバー街では、深夜まで若者たちが音楽とお酒を楽しんでいた。不夜城のバー街には、欧州系や日系メーカーの乗用車も駐車されていた。富裕層、都市中間層は、確かに内陸部の拠点都市に広がっている。

楽器について調べてみると、中国は、すでにピアノの製造、販売で世界一となっている。2008年の世界の有力ピアノメーカー48社の生産量は42.4万台で、金融危機の影響などから、前年より4.3万台減少した。中国の生産台数は前年比7.9万台減の31.3万台だった。このうち6.2万台が輸出されている(中国楽器協会)。また、ピアノを習う人が約3,000万人に及ぶとされる(中国音楽家協会)。

ただし、普及率はまだ低い。2008年末で、都市部(都市戸籍住民)のピアノの世帯普及率は全国平均で3.0%だ。マイカー(8.8%)、ビデオカメラ(7.1%)、健康器具(4.0%)にも及ばない。合計31の省と直轄都市別では、上海市がトップで5.8%、2位の北京市が3.6%、さらに山東省、広東省、福建省、遼寧省、浙江省、江蘇省と沿岸部が上位を占めた。

普及率について所得階層別の統計もある。全国の都市部世帯を6分割した最高所得層の普及率は4.3%だが、上海市の平均にさえ及ばない。北京市の都市部世帯を6分割した最高所得者層は6.6%、広東省の都市部世帯を7分割した最高所得者層は7.4%となっている。農村住民の調査にはピアノは含まれていないが、都市部に限ってみても、未開拓の潜在市場は大きそうだ。

ピアノの学習は1980年代、北京市、上海市など沿岸部の都市部から広がり始めた。この世代からすでに世界的な演奏家が生まれている。ひとりは、内陸部の重慶市出身のユンディ・リだ。4歳からピアノを始め、2000年のショパン国際ピアノコンクールで、中国人として初めて優勝した。もうひとりは、ラン・ランで、東北部の遼寧省瀋陽市出身。父は空軍所属の歌舞団の二胡演奏者だった。3歳からピアノを習い、5歳で地元の瀋陽ピアノコンクールに優勝した。12歳で、ドイツで開かれたエトリンゲン青少年ピアノコンクールで最優秀賞および技能賞を獲得するなど幼いときから、才能を開花させた。北京オリンピックの開会式で協奏曲を演奏している。2人はともに1982年の生まれだ。世界一のピアノ市場の広告塔の役割も期待される。中国は、この2人以外にも世界的なピアニストを輩出し始めている。

中国大手家電量販店の蘇寧電器は今年6月、買収した日本の家電量販店ラオックス系列の楽器店「音楽箱」を上海に出店させた。白物家電、テレビ、パソコン、携帯電話などが中国でも、買い換え需要中心になっている。沿岸部の都市部では、なかなか売れない商品が増えているわけだ。全国の都市部世帯の携帯電話普及率は172.0%、カラーテレビは132.9%、エアコンは100.3%、洗濯機は94.7%、冷蔵庫は93.6%だ。上海市では、パソコンが100%を超えている。家電量販店は、内陸部へ出店を増やすほか、沿岸部市場の掘り起しが必要になっている。買収から一年間が経過した。蘇寧電器はラオックスを通じて日本市場の成熟や飽和状態を研究し、楽器店の出店を考えたのではないだろうか。

武漢市の旧租界の表通りから、100メートルほど入ると、エアコンもない食堂が並んでいる。牛肉入りの麺が一杯4元、薄焼きの饅頭は0.5元だった。

中国の人口は、米国、欧州共同体(EU)、東南アジア諸国連合(ASEAN)を合わせた人口に相当する。ひとつの経済圏と考えるには、中国は、あまりにも巨大過ぎる。

注:東京都、大阪府、神奈川県の人口上位の3自治体で人口が約3,000万人。