「日本ブーム」のロシアにおける対日世論の動向

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日本とロシアの共通点を挙げよといわれれば、人によって様々な要素を指摘するであろう。しかし、昨年起きた日本の政権交代以降では、政治面での「双頭体制」が最も大きな共通点といえるのではなかろうか。

鳩山総理大臣と小沢民主党幹事長との関係をみると、メドヴェージェフ大統領とプーチン首相との関係がつい連想されてしまうのであるが、トップにリベラルな指導者が立つ一方で強面のナンバー2が実質的に差配する(ようにみえる)権力構造は、日本とロシアに共通のものではないかと思われるのである。

このように、権力構造の面では共通点をみてとれる鳩山政権とメドヴェージェフ政権であるが、支持率の面では相違が生じてきている。日本では、最近の複数の世論調査で鳩山政権の支持率が20%台となっているのに対し、ロシアでは、「メドヴェージェフ大統領の活動を支持する」と回答した比率は59%となっている(出典:4月24日付全ロシア世論調査センター)。また、「信頼する政治家」として、50%がプーチン首相を、44%がメドヴェージェフ大統領を挙げている(出典:同上。複数回答可)。この調査を実施した全ロシア世論調査センターが政府寄りの機関だといわれている点に留意しても、メドヴェージェフ・プーチン双頭政権はおよそ半数の支持を得ているとみてよいだろう。

さて、昨今のロシアでは、寿司ブームに始まり、村上春樹の小説が売れるなど、食や文化の面で日本の人気が高まっている(4月8日付JBプレス「モスクワだけでなく、地方都市でも日本ブーム」参照)。経済面でも、日本ブランドの自動車や家電製品に対する信頼は高く、4月にモスクワに開店したユニクロも盛況のようである(4月30日付JBプレス「モスクワでも長蛇の列 ユニクロが開店」参照)。このように、ロシアでは「日本ブーム」ともいえる現象が起きているのだが、はたしてロシアの世論では、日本はいったいどのような評価を受けているのだろうか。

少し古いデータになるが、ロシアにおける三大世論調査機関の一角を占める「世論基金」が2008年7月に実施した調査によれば、G8参加国のうちロシアが良好な関係を築いている国はどこか(複数回答可。但し3カ国以内)という質問に対し、ドイツ(43%)、フランス(24%)に次いで日本は第3位につけており(19%)、2006年6月に実施された調査の時の13%と比べてやや上昇している。しかし、G8参加国のうちロシアが険悪な関係となっている国はどこか(3カ国以内)という質問に対しても、米国(45%)、英国(19%)に次いで日本は第3位(12%)となっている(2006年6月の調査では17%)。

また、同じ世論基金が2008年11月に実施した調査では、G20参加国のうちロシアが優先的に関係を発展させるべき国はどこか(5カ国以内)という質問に対して、中国(51%)、ドイツ(50%)に次いで日本は第3位(39%)となっており、36%のフランスを上回っている。

以上、「多国間関係」の文脈でみた日本との関係に関する世論調査の結果をみてきたが、ここからみてとれるのは、ロシアと日本との国家間の関係を良いとする見方が増えており、関係を発展させるべきだという見解が4割近くを占める一方で、両国の関係を険悪とする見解もそれなりに存在しており、肯定的な見解と否定的な見解の双方が一定数ずつを占めているということである。

つづいて、「二国間関係」の文脈でみた日本との関係に関する世論調査の結果をみてみよう。2009年7月に世論基金が実施した調査によれば、ロシアとの関係において日本を友好的な国家とみなす比率は39%、非友好的な国家とみなす比率は36%、回答困難は25%となっている。ここでも、肯定的な見解と否定的な見解の双方が拮抗している。

ちなみに、同調査において、北方領土問題について問題の存在を知っていると回答した比率は52%、北方領土問題について耳にしたことがあると回答した比率は31%、初耳と回答した比率は14%、回答困難は3%であった。なお、日本を「非友好的」とみなす人の間では、北方領土問題の存在を知っていると回答した比率は69%と、比率が全体平均よりも高くなっている。つまり、日本を非友好的とみなす人の約7割が北方領土問題の存在を認識していることになる。

以上をまとめると、次のことがいえよう。すなわち、現在のロシアでは、文化面や経済面では「日本ブーム」にみられる日本への肯定的評価が生じているものの、世論調査の結果を検討すると、日本との国家間関係については、多国間関係の文脈でも、二国間関係の文脈でも、肯定的な見解と否定的な見解がそれぞれ一定数ずつ存在している、ということである。

文化面や経済面での親日的な潮流が、果たして政治面での両国間の関係改善につながるのかどうか、今後の動向が注目されるところである。

以上