ロシアの新しい一歩 ―始まるアジア・太平洋への原油輸出―

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ロシア極東の日本海沿岸から日本や韓国などアジア・太平洋諸国に向けて初めてとなる原油の輸出が12月末に始まる。シベリアの油田地帯とロシア極東を結ぶパイプラインが中間地点まで完成し、ロシア極東の日本海沿岸まで鉄道で運ぶメドが立ったためだ。当面は年間1,500万tの原油を日本や韓国などに輸出する。3年後には日本海沿岸までパイプラインを完成させ、年間5,000万tまで増やす計画だ。

同時に、ロシアは中国への支線建設も進め、来年(2010年)にはパイプラインでの原油輸出を開始する。順調に行けば、中国向け3,000万tを含む年間8,000万tの原油をアジア・太平洋諸国に輸出する計画だ。

シベリアで採れた原油をアジア・太平洋地域に輸出する計画は日本でも注目されている。パイプラインと鉄道を組み合わせた暫定開業とはいえ、それが実現する意義は大きい。

ロシアはシベリア・極東開発を最も重要な国家プロジェクトと位置づけ、同地域での資源開発とそこで採れた原油をアジア・太平洋地域に輸出する計画を進めてきた。数年前からはサハリン沖で採れた原油を日本や韓国に、シベリアの原油を中国に鉄道で輸出するなど、実績を積み重ねてきた。しかしながら、数量や輸出先は限定的で、アジア・太平洋地域への本格進出とまでは言えなかった。今回はそれらとは比べものにならないほど大きい。成長の続くアジア・太平洋地域のエネルギー市場へのロシアの本格進出である。

シベリアで採れた原油をパイプラインでロシア極東の日本海沿岸まで運び、そこからタンカーでアジア・太平洋諸国に輸出する構想はソ連時代からあったが、議論が本格的に始まったのは10年近く前のことだ。ルートの変更や建設費の高騰、日中による優先着工をめぐる激しい争いなど曲折を経つつ、着工から3年余り、計画より1年遅れで開業する。4年後(2013年末)にはパイプラインの出口付近に製油所も完成させ、付加価値の高い製品を輸出する計画もある。

ロシアは石油だけにとどまらず、天然ガスや石炭などエネルギー資源でも、アジア・太平洋地域に新たな輸出販路を築きたいと考えている。なかでも、天然ガスは、ウラジオストクへのパイプラインの建設が進行中だ。国内だけでなく、将来的には輸出も視野に入れており、ウラジオストク郊外にLNGプラントも計画されている。製油所やLNG計画はサハリン・プロジェクトに続く日ロ間のエネルギー協力、技術協力案件としての期待も高い。

一方、地元に目を転じてみると、ロシア極東にとっても、久しぶりの大型プロジェクトだ。ソ連解体後だけでも様々な開発プロジェクトが打ち上げられたが、その度に財政難や中央の方針転換などにより消えていった。何一つ実現しなかったといっても過言ではなく、いつも絵に描いた餅だった。

プーチン首相はロシア極東を重点的に開発する方針を示している。なかでもパイプラインの最終地点のある沿海地方は2012年のAPECサミットに向けて大規模な再開発の中にある。ロシア極東は、人口減少、中央との経済格差、慢性的なエネルギー不足、中国からの人口・経済圧力など様々な問題を抱え、中央から見捨てられているという感情もある。そうした中での大型プロジェクト実現は、連邦中央の極東重視が決して口先だけでないことを示す初めての実例となる。

油田開発の遅れで輸送するための十分な原油をどう確保するのか。日本海沿岸までパイプラインは本当に完成するのか。難しい課題は少なくない。そうした課題を解決するには時間がかかるであろうが、ロシアは、新しい一歩を踏み出した。