モンゴルの電力事情
2009年12月01日|モンゴル
南ゴビ電源開発株式会社 代表取締役
本間邦興
本年の7月にウランバートルで、モンゴル鉱山資源・エネルギー省主催の電力がテーマの国際会議に出席した。モンゴルの電力の抱えている課題について、幅広い分野での議論が行われた。海外からの出席者の多くは、ドイツの関係者(政府機関・銀行・メーカー・コンサルタント)を中心にヨーロッパからのメンバーであった。中国からもメーカーが1社参加していた。
モンゴルの電力事業の課題は大きくは、3つの分野である。
- 設備の劣化
- 電力料金システム
- 環境対策
1. 設備の劣化
モンゴル270万人の約半数がウランバートルに集中している。モンゴルの電力の課題はウランバートルの課題である。1991年の新体制移行に伴って全てのロシア技術者が、モンゴルから撤退し、自立した電力システム運営が開始された(この間の日本からの援助は非常に有効であった)。しかし、発電所、送電システム、配電システムなどの現有設備は、古いロシア製のものが多く残っている。発電所は第2火力、第3火力、第4火力と主力の発電所において新しい設備はない。補修とリハビリで何とか凌いでやってきている。それぞれの火力発電所は自立した国有の会社としての経営体制をとっている。
停電は日常的におきる。原因は市内の古い配電設備の劣化によるものである。ウランバートルではいくつかの民間の配電会社があるが、設備更新は進んでいない。
2. 電力料金システム
電力料金は、社会政策として国が料率を決めている。現在68トゥグルグ/kwh(4円強)であるが、設備の償却原価をカバーしていない。従って電力会社は内部留保がなく自主的な設備投資が出来ない。
また、盗電を初めとして、料金未収率が高くこの課題も大きい。
3. 環境対策
モンゴルの発電所は基本的に石炭火力発電所である。郊外にあった発電所が、ウランバートル市の増大により市内に取り込まれてきている。第4火力のみ電気集塵機は設置されているが、排出ガス(NOx、SOx)の回収装置はない。これが、ゲルの排煙とあいまって、冬のウランバートルの白い夜を演出している。今後一層の大気汚染の悪化が心配されている。石炭灰の処理の課題も出てきている。処理場が不足してきていると同時に、河川の汚染につながる恐れも出てきている。
この会議では、多くの提案がなされたが、主のものは、以下の通りである。
- 電力料金の値上げならびに国の財政支援の拡大
- 緊急対策としての様々な設備回収とリース等のファイナンスの工夫
- 短期・長期にわたる人材育成
- 民生用の機器のエネルギー効率の向上
- 再生可能エネルギーの導入
当社はモンゴルの資源開発の未来を踏まえ、長期の電力体系構築への提案を行った。
- 南ゴビ地域(タバントルゴイ)での集中した発電所の建設(石炭資源の有効利用)
- 南ゴビ地域とウランバートルとの送電線による連携
- ウランバートルの発電所の漸次廃止
今後はこの計画への日本からの企業参加が不可欠であり、タイミングの良い実施計画策定が望まれている。