地域の対ロ貿易について思う

|北東アジア全般

今年になって対ロ貿易の落込みが激しい。世界同時不況の影響があることは間違いないが、ロシアの落込みの大きさは際立っている。アジアでは、中国、インド、更にはインドネシアなどの経済の堅調ぶりが注目を集める。対して、日本の北の隣国ロシアの不振は気にかかる。新潟にしても北陸3県にしても、地域経済の興隆を願う立場から言えば、日本海の対岸にあるロシアや中国東北地方の経済的興隆こそが一つの鍵である。現に、2006年以降昨年までの3年間、北陸3県の輸出の向け先国第1位はロシアであった。

ロシアは90年代の混迷をようやく脱し、1999年以降昨2008年までGDPもプラス成長を続けているが、対外貿易の面から見れば、ロシアが志向している方向は、資源輸出国になる方向である。その意味でプーチン首相が進める沿海地方南部を拠点にアジア太平洋に資源輸出の市場を求める戦略は現実味が感じられる。それにより中長期的には、ロシア極東も活況を見せるであろう。

もっとも、資源の供給を受けるだけでは日本としては面白くない。ここ数年、日本の対ロ輸出は急激に拡大し、2006年以降は貿易収支も日本の出超に転じている。しかし良く見てみると、日本の輸出の3/4は自動車であり、これに建機を合わせると輸出総額の8割に達するという非常に偏った貿易構造になっている(2008年)。その自動車輸出は、今年1~6月、前年同期比9.1%(90.9%減)と大幅に落ち込み、ロシアの自動車(乗用車)生産も上半期、(前年同期比)56%減、通年の販売見込みも5~6割の減少が見込まれている。中でもわが地域の対ロ輸出の太宗を占めてきた中古車輸出は、今年上半期、北陸3県と新潟県の税関を通った輸出金額で、前年同期比6.4%(93.6%減)と壊滅的に縮小している。しかも、ロシア政府が中古車輸入関税を緩める気配は全く感じられない。

この様な状況を考えると、自動車(新車)輸出は2~3年のうちには回復して来るかも知れぬが、その他の輸出商品ジャンルも開拓して、輸出商品構成を是正してゆく必要を感じる。かつて日本製品は家電製品を始め、世界市場を席巻していたが、経済学の比較優位論そのままに、労賃の安い国々に市場を奪われ、 ロシアにおいても日本製品の影は薄い。世界的に見ても、付加価値の高い高機能製品にシフトするというマーケット戦略・経営姿勢を続けてきた結果、今ではボリュームゾーンの製品では韓国メーカーに勝てないという状況に追い込まれている。しかも、経済発展著しい新興諸国のマーケットにおいては低価格帯商品が市場の中心を占めており、ボリュームゾーンの商品での競合から逃げていてはわが国の輸出はジリ貧に陥ることが目に見えている。ボリュームゾーンの商品ジャンルで如何に戦うかは、日本メーカーに共通の課題となっているが、ナショナルブランド・メーカーが少ないわが地域(北陸或いは新潟を含めた日本海沿岸地域)においても、輸出商品構成を従来の工業製品一点張りではなく、消費財や食材に拡大するとか、サービス産業分野での事業展開を含めて、外に打って出て、閉塞感が高まる局面を打開する取組みが、今までにも増して求められているのではなかろうか。更に、日本海に面したわが地域としては日本海を内海とする対岸貿易の拡大こそが最も期待される姿ではあるが、現実を見れば、わが地域においても韓国、中国、台湾、香港、ASEANといった東アジアとの貿易が大きな比重を占めており、同地域との交易を重視して行かねばならぬのが現実である。従って、地域の対外交流戦略もこの点を十分に考慮して取組んでゆく必要があろう。

一方、わが地域が日本海を介した対岸貿易の結節点として機能して行くためには、日本海横断航路を強化して、新潟であれば関東圏、北陸であれば中部圏、関西圏の物流ニーズを地域の港湾に取り込んでゆく必要がある。しかし、最近までその物流ニーズの底辺を支えていたのは中古車の対ロ輸出であり、その中古車輸出が壊滅状態に陥った今となっては、シベリア鉄道経由でロシア西欧部へ運ぶ自動車や建機、或いは家電製品の部品・部材輸送ニーズを確保してゆくのが最大の課題である。当面、その物流需要も航路開設・運営を保証するには必ずしも十分とは言えず、日本海沿岸地域が連携した貨物量確保策が考慮されても良いのではないかと筆者の目には映るが、如何であろうか。