中国の産業高度化と日本の中小企業の可能性

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世界の工場として、中国はいまや産業高度化の重要な転換期に差し掛かっている。中国は雑貨、繊維などの伝統産業の高度化を図るとともに、省エネ機器、IT、エコカーなど、新興産業の発展も推進しなければならない。

ところが、中国の産業高度化は、地場企業の力だけで実現しうるものではない。伝統産業について、中国では数多くの産業集積が形成されている。例えば、浙江省の義烏は世界最大の雑貨集散地として、25,000社の雑貨メーカーと60,000社以上の販売店舗が集積している。河北省の永年は中国最大のボルト・ナットの産地であり、関連する中小企業の数が2,300社にも上っている。これら集積地での主な競争パターンは、ローエンド市場を中心とする熾烈な価格競争であり、高度化の意欲があるけれど、現在のような競争の泥沼から脱出できない企業が多数存在している。

一方、新興産業については、2011年から始まる第12次5カ年計画の中で7大戦略的新興産業(省エネ・環境保護関連産業、新世代情報技術産業、バイオ産業、ハイエンドの機械設備製造業、新エネルギー産業、新素材産業、エコカー産業)の確立が掲げられており、2015年までにこれらの産業のGDPに占める割合を8%まで、2020年までには15%まで引き上げることが目指されている。しかし新興産業の場合でも、潤沢な資金が保証されているとはいえ、コアの技術や部品を開発する能力を持ち合わせていないことが中国企業にとって最大のネックになっている。

中国の伝統産業と新興産業に共通する問題点の一つは、高度化の担い手である地場企業がすり合わせ型の生産システムに向いていないことである。中国企業は、巨大な国内市場で急成長を遂げてきた。市場規模が拡大しつづけている状況のなかで、多くの企業は常に新しいビジネスパートナーが現れてくるという前提で、事業を展開してきた。その結果、中国での企業間関係は、流動的かつ浅はかなものになってしまった。このような取引関係は、成長する新しい市場の開拓に確かに有利である。しかし、伝統産業の高付加価値化や、新興産業でのキーコンポーネントの開発にとって重要であるのは、アセンブラーとサプライヤーの間で長期的かつ安定的な付き合いがあることである。両者の間で特定の製品に関して多くの知識を共有したり、特定の部品加工について綿密な調整を繰り返したりすることが必要である。つまり、産業高度化を推進しようとする中国にとって、日本メーカーが得意としている「すり合わせ型」の生産システムの構築が求められているのである。

当然のことながら、これは金融危機や親企業の海外進出で苦境に立たされた日本の中小企業にとって格好のチャンスとなる。中国企業の高度化への取り組みに、日本の中小企業が協力する可能性が大いに秘められている。現に、東京大田区の中小企業でさえ、「中国市場勉強会」を立ち上げしたり、中国市場開拓に向けた調査プロジェクトを実施したりしている。

しかしながら、中国企業との連携がそうは簡単に進まないことも覚悟しなければならないだろう。市場や技術に関する理解で、日中の間であまりにも大きなギャップがあるからである。中国企業は、市場のチャンスがあれば出来るだけ経営規模を大きくしようとするが、日本の中小企業は、規模の拡大による価格競争を嫌う傾向が強い。日本企業は蓄積してきた技術が流出することへの警戒感が強いが、中国企業には技術は共有されるものであり、資金があれば入手できるものだ、という発想がいまだに強い。

このようなギャップを埋めるために必要なのは、日中の中小企業のビジネスマッチングを推進する民間主導のプラットフォームだと思われる。プラットフォームを運営する会社には、法律に精通し、技術的知識を有し、かつ企業経営に対する日本人と中国人の発想の違いをよく理解している人材が確保されていなければならない。中国の産業高度化における日中連携の成否は、このようなプロットフォームの確立にかかっている、と筆者は考えている。