北海道とロシアとの経済交流 -特に食品に関して-(完)

|ロシア

食品に関する我が国の輸出環境は、現在、最悪の状態といっていいと思います。

リーマンショック以来、為替レートが円高基調で推移していることに加えて、震災に伴う原発の放射性物質の問題が、地球規模で日本製品に対する買い控えを生んでいます。

仮に輸出できても、消費者心理からすれば、買わないという状況にあります。

こうした厳しい状況にあるので、消費者心理が好転するまでが待つという姿勢では、何時振り向いてくれるのか何の保証もありませんので、いまだからこそ輸出側が徹底してPRをしていく必要があります。

弊社では、今年度も北海道からの委託を受けて、サハリン州で食品の安全性を前面に立てて、PRと販売を行います。

本題ですが、2010年にウラジオストクで実施をした「ロシア極東大陸地域への北海道産食品に関するPR事業の結果については、北海道庁のHP(経済部商業経済交流課ロシアG)に掲載されていますので、ご覧頂きたいと思います。必要な手続きの内容、所要時間、所要経費を記載して、実務的に参考としていただけるように作成しています。

ロシアへの食品の輸出については、手続きの難解さ、物流の悪さと所要時間、手続きに要する経費など、これまでも様々な報告書等でも指摘されているところですが、逆に考えると、輸入を禁止している訳ではないので、手間隙を掛けて費用を負担すれば、可能ということが再確認できたことになります。

この中で、ロシア側の輸入企業から提示があった要件は、

  1. 賞味期限が180日以上あること
  2. パッケージが解かりやすい表示であること
  3. ロシアでの販売価格が100ルーブル程度であること

と極めて厳しい条件提示がありました。

いわゆる行政ベースの調査事業としては、目的は達成できたわけですが、こうした点も含めて、本来の商売上の貿易として成り立つかどうかが問題です。

北海道のように圧倒的に多い中小零細な製造企業が、自ら輸出をして商売として成り立つかどうか、理解しやすくするために、非常に大雑把ですが一例をあげてみます。

20フィートコンテナに上記の様な要件に合致する加工食品を満載した場合の商品価格は、約4~5百万円程度になります。この商品を扱う企業の形態によって収益率が変わってきますが、ここでは製造企業ではなく、貿易会社とした場合で、まず想定してみます。この手数料収入が仮に10%とすると、1コンテナ動かすと4~50万円の収入となる計算になります。

専門の貿易会社として成り立つためには、専任のスタッフを抱えるとすると、人件費や管理費、営業経費などを含めて1千万から1千5百万円くらいの収入が必要になります。逆算すると、年間30本くらいのコンテナを扱わないと、専任者を置いた形の貿易が難しいという計算になります。販売価格ベースでは、1億5千万円程度になります。これは、ロシアばかりでなく、貿易が盛んな東南アジアにおいても同じことだと思います。

製造メーカーが直接輸出する場合は、収益率が違いますので、自社製品の場合を想定して計算していただくと、どのくらいの商いをすればいいか、見えてくると思います。

ここで、課題が2つあります。

一つは、販路の確保です。年間30本もの商品を捌けるだけの市場が存在するのか、ということです。いきなりそんな美味しい話の市場は存在しません。輸入側の企業に期待するわけですが、相手任せでは売れなくなれば切り捨てられるだけです。したがって、輸出すると同時に、売り手である北海道側が、市場の確保、販路拡大を平行して実行する必要があります。

このため、弊社では、既にシベリアからモスクワまで販路拡大のPRも実施しています。

これでも、単一の商品で、これだけの量を売ることは北海道内の企業にとっては至難です。 安定した商売を求めるなら多品種を扱うことです。消費者は、新しい良い商品が普及すると、もう少し違ったものを選択できることを求めます。例えば、スーパーの棚に、醤油だけで何種類もの商品が並んでいます。消費者の好みや、使う量などによって選択できる商品の品揃えをして、総体で儲ける組み立てにします。

こうして数箱単位で集荷した商品でも、何十種類もの商品があれば、コンテナを埋めることができるかもしれません。この場合、製造企業が自社製品だけで、こうした組み立てが出来るかといえば大多数の企業は無理だろうと思います。したがって、少量、多品種を扱える専門の地元企業、平たく言えば公益的な性格を有し、中小企業の商品を扱う貿易商社を造って、育てる必要があります。

もう一つは、年間を通じて、コンスタントに供給できるかどうかです。アイスクリームを冬の時期にも食べるようになったように、季節に関係なく、何時でも欲しいと思うのが消費者です。うちは、原料がある秋しか造ってないから・・・賞味期限を考えると、精々半年しか商品は無いと良く聞きます。まあ、そういう事情ですから止むをえませんが、消費者は何時も欲しい訳で・・・このギャップを埋める工夫が必要です。

その一つの例として、九州で発足している農産物を中心にした貿易会社がありますが、ここが実施しているのは、全国から集荷をして年中供給できる体制づくりです。

産地は南から順に北上してきますが、沖縄から北海道までたどり着くと、そろそろ沖縄ではまた収穫できるころとなります。ハウスを併用すれば、より確実ですね。

海外のスーパーでも、日本産の野菜はいつでも店頭に並んでいる・・・ということになります。

したがって、北海道産の食品だけを売る必要はありません。全国の同じような食品を常に販売できることが必要で、あそこに行けば、日本の食品を何時も売っている・・・というのが大事です。

どうして日本か?今回の原発事故に伴う世界の消費者の反応は、福島ではなく日本の食品が危ない・・・です。地域ブランドが流行っていますが、地域差を付けても、海外では大して意味が無いことを証明したものと思います。

中小企業の商品を扱えるような貿易商社は、収益性が低いので経営が非常に難しく、誰しもがそうした分野を手掛けるのを嫌います。しかし、こうした機能が無ければ、地域で大多数を占めている中小零細企業の商品が、海外に展開できる可能性は、極めて低くなります。いわゆる食を海外に展開して地域発展の柱とするのは、無理があるということになります。また、収益性の低さを補完するためには信用力が必要であり、そのためには公益性を付保することが重要な要素になります。民間企業との差別化となります。

こうして物量を確保して、コンスタントに輸出する体制が出来ると、貿易上の課題の一つである安定した輸送ルートの確保や、輸出コストの低減にも、必然的に繋がってきます。

まあ、商売は、極めてシビアな世界です。それだけに、将来への希望を持つことも必要ではないでしょうか。例えば、最初に投稿したように「新幹線をモスクワまで」敷くことが出来れば、稚内とコルサコフで連携して通関することで、積み替え無しのノンストップでモスクワまで輸送できます。時間も3日間で行きますので、生鮮農産物、水産物、チルド製品でも可能となりますね。

日本食ブームの食材は、全部輸送可能になります。そこから1日でヨーロッパにも行けます。スエズを通過する南回りの輸送ルートの、有事の代替ルートにもなります。

そうすると、輸送量・・・貿易が飛躍的に伸びるんだろうな・・・いや輸出だけでなくロシアやヨーロッパからの輸入も激増することも、考えられますよね。

そんな日が来ることを考えるのは、私だけでしょうか。