誠実な経営で現地に根付く

|中国

中国ビジネスを展開する外国企業に今、最も求められているのは、誠実な経営をし、消費者、周辺住民、顧客、政府部門などから信頼を勝ち得ることである。誠実な経営という概念には、企業倫理、社会的責任、社会的貢献、品質管理、説明責任というものが含まれる。

2008年9月に発生した「三鹿乳業」によるメラミンが混入した毒粉ミルク事件は、まだ記憶に新しい。三鹿製の粉ミルクを飲んで乳児が死亡したケースも伝えられている。三鹿は、四川大地震に際して数百万元の義援金を出している著名企業であるが、「彼らには実際には企業倫理とは何かに対する理解がなく、社会的貢献は一種の偽善である。企業倫理や社会的貢献は功利のためで、このための営業手段の一つにすぎない。」という指摘もある(盛思シン「重塑中国企業の商業倫理与社会責任観」鄭永年=潘国駒『中国〓粉事件与治理危機』八方文化創作室、2009年、75-81頁)。

(* シン:「金」三つ 〓:おんなへん+乃)

毒粉ミルク事件は、氷山の一角にすぎないともいわれている。そのような中、中国ビジネスを展開する外国企業、とりわけ合弁事業方式などにより中国に投資して企業を設立している外国企業は、毒粉ミルク事件から何を学び、どのような経営をする必要があるのか。

毒粉ミルク事件は、なぜ生じたのか。第一に、三鹿社内における品質基準・管理システムが不備であったことである。メラミン混入が明らかになった後にも生産を継続していた。第二に、三鹿が原料を調達する際に調達先原料の品質管理もしていなかったことである。第三に、国の食品安全基準、監督システムも不備であったことである。当時は食品安全法もなく、監督官庁の役人が賄賂をとって目こぼしするということは今も昔もある。

では、外国企業は中国においてどのような経営をすればよいのか。各ステークホルダーとのミスコミュニケーション、異文化交流から生じるトラブルを回避するため、説明責任を果たし、製品の品質確保のための努力を、社内だけでなく原料などの供給者を含めて広範に行うなど誠実な経営をする必要がある。

例えば、Teresa DeLaurentisは、サプライ・チエーンにおける倫理的経営の重要性を指摘している(Teresa DeLaurentis, Ethical Supply Chain Management, China Business Review, May-June 2009, pp38-41)。また、ビジネス・パートナーに対する教育も重要である。ネスレは、中国に進出した際に地元農家ともWin-Winの関係が構築できるように、コーヒー豆の栽培技術を地元農民に教え、コーヒー豆を栽培する農家に特段の融資をすることなどをしている(http://finance.sina.com.cn 2005年08月10日 新浪財経 中国管理伝播網)。

ビジネス・パートナーだけでなく、あらゆるステークホルダーに対して社会的責任を果たすようなことも外国企業の重要な経営戦略である。バイエルは、清華大学とともに衛生部からのサポートを得て、清華バイエル公衆衛生・HIV/AIDS医療研究プログラムを立ち上げている(Felicia Pullam, Corporate Responsibility as China Strategy, China Business Review, Mar-Apr 2006, p36)。

これからの中国ビジネスは、誠実な経営がキーワードになる。