「北東アジアの輸送回廊」

NHKラジオ第一放送「ラジオあさいちばん」
 放送

Q: 北東アジアについて、今朝はERINA調査研究部・研究員の川村和美さんにお聞きします。川村さんは、間もなく開かれる北東アジアの運輸・物流に関する国際会議の事務局を務められているとお聞きしましたが、どのような会議ですか。
(川村) 北東アジアというのは、ロシア、中国、韓国、日本など、さまざまな国が自分たちの得意分野を持ち寄って協力しあうと、世界でも指折りの豊かな経済力を持つ可能性を秘めた地域です。ただこれまでは、お互いに政治制度が違っていたり、海や川を隔てていたりで、十分な交流が出来ませんでした。たとえばシルクロードのように、人や物が行き交うと、道が出来ます。北東アジアではこの道さえ、国境などで分断されていました。そこで、関係各国や国連UNDPの専門家が集まって、人や物が通る「輸送回廊」を道路、鉄道、港湾などのハードインフラや、通関手続や法整備などソフトインフラの両面で整備していこうと話し合うことにしました。
Q: 今度はいつ開催されるのですか。
(川村) 11月27日、新潟市で開催します。実はこの会議は、新潟市で毎年開かれている「北東アジア経済会議」という国際会議の常設的な分科会としてスタートしたもので、昨年6月から年3回のペースで開催しています。
Q: どういったことを話し合うのですか。
(川村) 私たちの狙いは、北東アジアの国際貿易を担う輸送回廊ネットワークの形成です。ヨーロッパにも「クレタ・コリドー」と呼ばれる輸送回廊の構想があって、私たちにとって一つのヒントになっています。これまでは、分科会のテーマとする北東アジアで重要な輸送回廊の特定を行い、その現状や課題を明らかにしてきました。これからは、これら輸送回廊の整備方向、ビジョンを描くことになります。
Q: 輸送回廊には、どのようなルートがあるのですか。
(川村) まず地球儀を思い浮かべていただくと分かりやすいと思います。日本など北東アジアとヨーロッパを結ぶルートは、かつてはアジア諸国をグルリと回る南回り空路や、インド洋などを経由するオールウォーターと呼ばれる海洋ルートが使われていました。丸い地球では実はこれらはとても遠回りで、ロシアを通っていくとはるかに近いルートになることが分かります。これがSLB=シベリア・ランドブリッジと言われるものです。
Q: なるほど。他には…。
(川村) 中国と中央アジアやヨーロッパを効率よく結ぶCLB=チャイナ・ランドブリッジがあります。もう一つ重要なのは、北東アジアの内陸部と日本海を結ぶ輸送回廊です。モンゴルと日本海を結ぶ回廊、中国の東北地方と日本海を結ぶ回廊などがあり、その出入口として、中国・ロシア・北朝鮮3つの国の国境地帯にある図們江地域や、ロシア極東の港湾が注目されています。さらに昨年、朝鮮半島南北の対話が進められるようになってからは、朝鮮半島を南北に結ぶ輸送回廊の整備もテーマに上り、合計9本の輸送回廊を対象に議論を進めています。
Q: わかりました。でも、北東アジアの人や物が行き来するには、さまざまな問題があるのですね。
(川村) 北東アジアの輸送回廊が国際輸送回廊として十分に機能し、国際貿易が活発になり、私たちの暮らしを豊かにしていくためには、今お話したような問題を一つ一つ解決していく必要があります。その時に、各国や各ルートがそれぞれ個別に整備を進めるよりも、関連する国々が協力して、調整しながら整備を進める方が効率よく問題を解決できると思います。優先的に取り組むべき課題は何なのか、それをどのような方法で、いつ頃までに解決することが望ましいのかを明確にすることが大切です。こうした北東アジア全体の輸送回廊の整備目標をまとめ、将来構想、ビジョンとして提案していきたいと考えています。11月27日の会議では、各国の専門家と一緒に、こうしたビジョンの設定に向けて話し合いを行う予定です。
Q: わかりました。川村さん、今朝はありがとうございました。

北東アジア基本インフォメーション

中国東北地方、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)、モンゴル、韓国、ロシア極東、日本で構成される地域。その沿岸域に着目し、「環日本海」地域ともいう。(1)経済的には構成国・地域が豊富な資源、労働力・市場、資本・技術の補完関係にあること。(2)国際政治的には冷戦構造の終焉とともに緊張から平和へ移行する象徴的な地域であること。(3)国内的には日本海沿岸地域の裏日本からの脱却。…などで注目されている。