「地方自治体の国際協力とODA」

NHKラジオ第一放送「ラジオあさいちばん」
 放送

Q: 地方自治体の国際協力とODA」について、今朝はERINA環日本海経済研究所、調査研究部の客員研究員 吉田均(ヨシダ・ヒトシ)さんにお聞きします。まず日本の地方自治体の国際交流の現状についてお聞かせください。
(吉田) 少し前の数字ですが、2001年現在、日本の地方自治体は、世界58ヵ国で1407の姉妹都市提携をしています。この件数を他の国々と比較すると、米国との比較では約60%に過ぎません。しかし欧州連合全体の15ヵ国との比較では約80%、中国の約1.4倍、韓国の約4倍に匹敵します。
またこれを財政の面から見ると、地方自治体全体の国際関係事業費は、2001年には1043億円でした。この8年間1000億円台を維持していますが、これを外務省予算と比較すると、その約7分の1に相当します。このうち実際の国際協力の費用は、70~80億円で推移しています。この金額を日本のODAと比較すると、150分の1に過ぎません。しかしオーストリアの国家予算との比較では10分の1、またルクセンブルクの国家予算との比較では半分の規模に匹敵します。つまり、世界的にみてわが国は、地方自治体の国際協力が極めて活発な地域であるといえます。
Q: この2~3年、地方自治体の国際協力に大きな変化があるということですが、どのような変化が起きているのですか。
(吉田) かつてODA、つまり政府開発援助とは、中央政府間での国際協力を指し、その実施主体も政府がほとんどでした。しかしこの2~3年、地方自治体が主体となるODA事業が急速に増えています。これを私たちは自治体ODAと呼んでいるのですが、これは自治体独自の事業をODA事業として実現することをさします。
98年以降ODA改革により、政府と国会の自治体ODAに対する見解が肯定的に変わりました。99年に閣議決定された「ODA中期政策」にも自治体との連携の必要性が初めて言及されました。このため現在、ODAの実施機関である外務省系の国際協力事業団や、財務省系の国際協力銀行が、地方自治体との連携をするようになりました。まだ金額的には小さいものの、現実に自治体ODAを実現し始め、その数も急速に増加しています。
Q: では具体的に、どのような事業が自治体ODAとして実現されているのですか。
(吉田) 例えば北九州市は、友好都市である中国の大連市との間で「中国大連環境モデル地区整備計画」という協力事業をしています。この事業は、北九州市が公害を克服する過程で培った、公害防止のための計画や技術、さらに環境監視システムなどをフルセットで、大連市に移転するために実施しています。そして最終的にこの事業には、約400億円のODA予算が使われる予定です。この他、埼玉県や東京都・大分県・沖縄県などが、環境保全・保健医療・地域振興などの分野で、地方レベルでの国際協力をODA事業として実施しています。また市レベルでも、松本市がODA予算と市民の寄付でネパールに武道館を建設しています。また岐阜県のように国際協力銀行と協力して、高速道路沿いにある道の駅のノウハウをタイに移転する事業をしている自治体もあります。
Q: では全体としては、どのような協力が行われているのですか。
(吉田) 全体としては、環境保全や保健医療・人材育成などの分野が中心です。特に相手国の地域住民に直接届く、福祉や「公共サービス」に関する技術とノウハウの移転を行い、相手国の人々に大変喜ばれているようです。また現在の政府のODAにはない特徴として、農業分野での品種改良のための共同研究など、日本側の地方自治体にも大きな利益のある双方向の協力事業も実施されています。
Q: わかりました。最後に今後の課題として、どのような点があげられるかお聞かせください。
(吉田) そうですね。これまで地方分権との関係で国際関係が議論されたことがありませんでした。したがって今後は地方分権化の一環として、ODAの権限も一部地方へ移譲する、そのためにも自治体ODAの制度化が必要と思います。欧州諸国やカナダでは、既にこのような制度が実現しています。
98年に岐阜県の梶原知事が、自治体ODAを制度化するための報告を、小渕総理に提出しました。しかしこの時は、前向きの回答を得たものの、残念ながら総理の急死により、立ち切れになってしまったそうです。したがって今度は、小泉総理をターゲットにして、複数の自治体が協力して働きかけてはどうでしょうか。もし実現できれば、そこには外交体制の多元化という、新しい世界が広がっているはずです。
Q: わかりました。吉田さん、今朝はありがとうございました。