「日中地域間経済協力」

NHKラジオ第一放送「ラジオあさいちばん」
 放送

Q: 北東アジアについて、今朝はERINA(環日本海経済研究所)の中村俊彦さんにお聞きします。中村さんは5月28~29日、黒龍江省ハルビンで行なわれた「日中経済協力会議」に出席し、日中間の経済交流、とくに地方同士の経済協力について話し合ってこられました。中村さん、おはようございます。
(中村) おはようございます。
Q: まず、日中経済協力会議とはどんな会議なのか、教えてください。
(中村) はい。最大の特徴は、日中間の経済協力のなかでも地域の経済協力を話し合いうことです。特に遼寧省、吉林省、黒龍江省など中国の東北地方全体と一緒に会議をするのは珍しいことです。中国東北地方は、生産基地としての可能性が非常に注目されている地域ですから、それが一堂に会して会議するというのは効果的で、重要なわけです。会議も過去、遼寧省・瀋陽、吉林省・長春、今回の黒龍江省・ハルビンと場所を変え、3年目を迎えました。
Q: 日本側は、どのような参加者ですか。
(中村) 日本側は、日中東北開発協会が主催しています。この協会は1984年、大連の経済開発を推進しようと設立され、以来、中国東北地方との経済協力を進めてきました。協会には当初から経団連や中国に関係する有力企業が参加してきましたが、日中間の姉妹都市交流が盛んになるにつれて、地域同士の経済協力も切実なテーマになってきました。
そこで、この日中経済協力会議でも今回から「地域協力分科会」を立ち上げ、新潟にある私どもERINAも、その分科会の運営をし、会議の共催者の一員に名を連ねることになりました。私自身、分科会の共同議長を務めました。
Q: 具体的には、どんなテーマで話し合われたのですか。
(中村) 協議のベースには「自治体ODA」を置きました。つまり、ODAや円借款がいま、地方の提案をもとに進めていこうという方向に動いていることに注目しました。
多くの地方自治体にとって、日中間の経済交流は「自分の所にある港を利用して、貿易を活発にする」ことが第一です。もちろんこれも大切なことですが、会議では「投資貿易」、「IT」、「農業」、「物流・観光」など他の分科会や、具体的な商談会にゆだねました。地域協力分科会ではむしろ、「地方が提案するODA」の仕組みについて日中双方が十分に理解することを目標にして、具体的なテーマとしては姉妹都市交流などで取り上げやすい「環境」と「まちづくり」を話し合いました。
Q: 環境とまちづくりですか。やはり身近なテーマのようですね。
(中村) はい。日中経済協力を図式化すれば、中国側のプロジェクト需要と日本側の技術・資金供給とのお見合いです。しかし、環境やまちづくりなどでは、日中双方のゴミ分別習慣の違い、クルマ優先社会の違いなど、根本的な市民意識の違いも大きいものがあります。こうしたギャップを埋めていくことが大切ですし、姉妹都市交流など日頃の地域交流が果たせる役割です。この点に自治体提案型ODAの狙いがあり、こうしたステップを踏まえて、これからの経済協力プロジェクトも組み立てられてくることになると思います。
Q: なるほど。そうした点から、特に興味深い提案などありましたか。
(中村) 例えば、中国ではこれから、一人っ子政策の影響などで急激に少子高齢化社会を迎えることが予想されます。一方、すでに少子高齢化問題を抱える日本の多くの自治体では、年齢や障害のあるなしにかかわらず誰にも住みやすい、使いやすい、ということを目指したユニバーサルデザインによるまちづくりを取り入れ始めました。分科会では、このユニバーサルデザインを紹介しました。
実は会議の舞台となったハルビンでは、2010年の冬季オリンピック誘致に名乗りをあげたそうです。オリンピックではパラリンピックも一緒に開催されます。長野やシドニーでもそうでしたが、ハルビンでもユニバーサルデザインによるまちづくりを進めることが、オリンピック誘致の成功につながります、という提案もありました。発展政策オンリーの中国の都市も次第に変わってきていますので、こうした提案は非常に面白いと思います。
Q: 中村さん、今朝はどうもありがとうございました。