「平壌国際経済技術・インフラ展覧会」

NHKラジオ第一放送「ラジオあさいちばん」
 放送

Q: 三村さん、おはようございます。
(三村) おはようございます。
Q: 今回、北朝鮮を訪問されたそうですが、それはどのような経緯なんですか。
(三村) 平壌国際経済技術・インフラ展覧会の視察のため、小泉首相が訪朝した直後の9月19日から25日までの日程で、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌を訪れました。この展覧会は、ドイツのミュンヘン見本市社の主催で、西側が北朝鮮で行う展覧会としては初めてのものです。出展は主にドイツ、イタリア、イギリスを中心とするEU諸国がほとんどで、一部北朝鮮の企業が出展していました。南北朝鮮の合弁で作られた平和自動車で組み立てられたイタリアのフィアット社の小型乗用車も展示されていました。会場には、現地の技術者や学生とおぼしき人々が見本やプレゼンテーションに見入っていました。新しいものを見たいという熱気であふれる会場でした。会場の前には、展示品として中国の第一自動車製のトラックが20台ほど並んでいました。工場のある吉林省の長春から走ってきたようでした。ヨーロッパ企業中心の展示品に対して、「そんな遠い国から買わなくても、近くにいいものを作っている国があるよ」と語っているようなトラックの群れでした。
Q: 初めての西側主催の展覧会ということですが、これはどのような経緯で可能なったんですか。
(三村) このような展示会が可能になったのは、2000年から2001年の間に北朝鮮がフランスとアイルランドを除くEU諸国と国交を結んだためです。スウェーデン、デンマーク、フィンランドなどとは1970年代から国交がありましたが、その他の国々とはつい最近まで国交がありませんでした。国交を結んだことで、ヨーロッパ各国のビジネスパーソンの訪問や今回の展覧会など、経済交流関係を促進するために必要な条件が整いつつあります。出展していたヨーロッパ企業の多くは、中国、特に華北、東北地方の担当者を派遣していました。展示の内容も、それほど具体的ではなく、北朝鮮との経済関係はこれからだという印象を受けましたが、少なくとも北朝鮮の現場の人々に対するインパクトは大きかったように思います。
Q: 今回の訪問は、ちょうど小泉首相の訪朝の直後でしたね。先方の反応はいかがでしたか。
(三村) 今回の平壌訪問はちょうど小泉首相の平壌訪問の直後となりました。そのため、ほぼすべての訪問先で小泉首相の訪朝と日朝平壌宣言に対する言及がありました。ある訪問先では「これまでは両国が敵対的関係であったために、日本の機関に対しては、協力関係を結びたいということすら言えなかった」という言葉が印象に残りました。民間セクターや地方自治体が発達し、政経分離の考え方ができる日本とは異なり、国家間の政治的関係が国内すべての機関の対応を決定する北朝鮮では、日本との交流を行いたいと考えていた機関も、そのことを公に表明できないことが多かったようです。両国の関係改善が両国民の率直な意見交換につながる可能性を感じた瞬間でした。
Q: 新しい経済特区ができたそうですが、それについて教えていただけませんか。
(三村) 北朝鮮は9月12日に新義州(シニジュ)特別行政区を設置する政令を発表し、同日新義州特別行政区基本法が公布されました。7月からの価格、賃金体系の調整措置と合わせて、北朝鮮がより積極的な経済政策をとりつつあることが明らかになりました。この新しい経済政策は、即中国の改革・開放政策のような政策をとることを意味するとは言えません。国内経済においては社会主義計画経済体制の中で、不合理な点を改善し、対外経済については、これまでの事業の反省の上から、より経済特区に権限を持たせるという、従来の政策の延長上にある変化ではないかと思います。平壌滞在中に楊斌氏が初代の行政長官になるという話を聞き、平壌のあとで訪れた中国の瀋陽で楊斌氏の記者会見を聞きました。ノービザ滞在についての発言など、中国当局との調整ができていないことが明らかになり、その後、楊斌氏は瀋陽の公安当局に拘束されてしまいました。現在中朝間で調整が行われているという報道が多いようです。当分の間新義州特別行政区の開発にストップがかかる可能性が高いようです。
Q: これが今後の経済交流の拡大にどのように結びついていくのでしょうか。
(三村) 新義州特別行政区基本法は、特別行政区に立法、行政、司法の三権を付与しています。香港と異なり、新義州には独自の法体系が元々あったわけではありませんから、これからすべての立法作業を行っていかなくてはなりません。法的な環境を整備するだけでもずいぶん時間がかかるでしょうから、具体的な投資環境が明らかになるまでに少なくとも半年から1年はかかるでしょう。投資環境を整備するには、資金が必要ですが、今の北朝鮮に多くの外貨は準備できません。日朝国交正常化が行われ、日本からの経済協力が可能になって初めて、新義州特別行政区が正常に機能する客観的条件が整うのではないかと思います。それまでは、羅津・先鋒でも行われているカジノのような施設を中心とした観光業、委託加工など、中国をターゲットにした案件が中心になると思われます。先ほど北朝鮮の経済が回復基調にあると申し上げましたが、国家予算の推移を見ても、ここ4年ほど経済は上向きになってきています。北朝鮮の経済がどん底になり、やけになってこのような措置をとったというよりも、経済が一段落ついたところで、さらなる回復のための措置であると考える方がよいと思います。
Q: 今日は朝早くからどうもありがとうございました。
(三村) いえいえ、こちらこそありがとうございました。