中国の対日直接投資の推進について

NHKラジオ第一放送「ラジオあさいちばん」
 放送

Q: アジア情報です。日本の企業が資金を出して海外に工場を作り、現地で生産を行うなど、日本から海外への投資は、今では盛んに行われています。それに比べると、外国企業が日本に投資する「対日直接投資」はそれほど盛んではありません。こうした中、中国企業に日本への投資の働きかけが行われています。ERINA・環日本海経済研究所の筑波昌之さんに伺います。筑波さん、「対日直接投資」とは、具体的にどういうことでしょうか。
(筑波) 例えば日本の企業が中国に工場を作ることは「対外直接投資」にあたり、アメリカのコンピュータのソフトウェア会社が日本に拠点を作ることは「対日直接投資」になります。この他にも、ヨーロッパの有名ブランドの直営店やファーストフード、大手スーパーマーケットが日本国内に店舗を展開するのも、外国の資本が入り、経営に参加・参入していれば「対日直接投資」です。一般に「外資系企業」と言われる企業は、対日直接投資の現れと言えます。
Q: では、実際に外国企業の日本への投資、対日直接投資の現状はどのような状態でしょうか。
(筑波) まだまだ外国企業の日本への投資は盛んではないと言えます。財務省の昨年末の統計で見ますと、対日直接投資の総額は10.1兆円です。日本の国内総生産・GDPに占める割合は2.1%で、主な先進国での割合、20~40%に比べると、極端に低い値となっています。
Q: 対日直接投資、日本にとってはどんなメリットがあるとお考えですか。
(筑波) 外国企業の投資は、資本が外国から入ってくるわけですから、地域の経済成長に重要な役割を果たします。また外国の新しい技術や経営手法がもたらされ、日本企業にも変革を促す機会となります。日本の自動車メーカーで、外国資本・経営方法を導入して、経営を立て直した例もあります。さらに雇用創出、消費ニーズの多様化や利便性の向上などにも貢献します。また、国を跨る経済交流を発展させることから多面的な国際関係の構築に結びつきます。
Q: 今回のテーマは、「中国の対日直接投資の推進について」ということですが、日本企業が中国に工場を作るのはよく聞きますが、その逆を推進しようとされているのでしょうか。
(筑波) 経済成長著しい中国では、日本海を挟んだすぐ隣の巨大な市場、日本への関心が高まっています。新潟が中国東北部で行った誘致活動を中心にご紹介します。日本海沿岸各国の経済的な交流を推進しているERINAでは対日直接投資の推進に結びつく研究を行っています。昨年度は新潟市に対して、外資系企業誘致に必要な施策・提言のための調査研究を実施しました。また新潟市でも「国際創業特区」を設置するなど、施策に向けた取り組みが始まりました。
Q: 中国ではどのような活動が行われたのでしょうか。
(筑波) まず7月に「新潟市投資環境説明会」が新潟市の友好都市である中国・ハルビン市で開催されました。これに同行したERINAが実施した中国企業へのアンケートでは、45件の回答のうち、1/3にあたる15件が対日直接投資の可能性ありとの結果となりました。これを受けて今月、吉林省長春市、遼寧省瀋陽市でも投資説明会を行ったところ、特に瀋陽市では同じアンケートで26件のうち、実に7割近い18件が対日直接投資の可能性ありとの回答でした。中国企業が投資先として日本に注目していることがよくわかります。
Q: 中国企業による投資は、これから盛んになってくるのでしょうか。
(筑波) 現在、対日直接投資のうち、およそ4割をアメリカが占める状況ですが、ERINAでは今後注目すべきは中国からの投資であると考えています。中国では従来の国有企業に変わり、民営企業が躍進してきています。また、WTO加盟により企業が国際競争力向上を目指し、ブランドの確立を求める動きなどが中国企業の海外進出を後押ししています。中国政府でも政策として推進しており、今後数年のうちに中国企業の対日進出が当たり前となる時代がくるだろうと思います。
Q: いずれ日本企業は中国企業に買い占められてしまうのでしょうか。
(筑波) 世界の工場と言われ、低いコストで大量の製品を作ってきた中国企業が自ら成長してイコールパートナーに近づいてきたということかと思います。日本側にとっても従来の中国とのパートナーシップを別の視点から見直し、中国の資本を活用して企業を元気にし、地域に活力を与える知恵が試されてきていると言えるでしょう。
Q: ありがとうございました。