「新潟・日露エネルギーフォーラム2006」について

NHKラジオ第一放送「ラジオあさいちばん」
 放送

Q: 今年、G8サミットの議長国ロシアは、エネルギー安全保障を軸に外交展開を図っていますが、日本との関係では、ロシア東部の石油や天然ガスの開発計画の動向が注目されています。そんな中、去る22日、新潟市で「日露・エネルギーフォーラム2006」が開かれました。今朝のアジア情報は、このフォーラムの結果について、主催したERINA=環日本海経済研究所=の中村俊彦さんに伺います。中村さん、まずこのフォーラムの狙いから教えてください。
(中村) ERINAではここ数年、北東アジアにおけるエネルギー安全保障の調査・研究を行っています。日ロ2国間のエネルギーフォーラムは昨年に続き2回目の開催になり、昨年は東シベリアの石油を太平洋岸まで輸送する「太平洋パイプライン」の計画を取り上げ、多くの関係者に最新情報を提供しました。今年は、ロシア東部に眠っている天然ガスの総合的な生産・輸送・利用計画が浮上してきたことから、その概要や各地の状況について情報を得た上で、日ロ間や日ロ双方の地方レベルでの協力可能性について議論しました。
Q: ロシア東部の天然ガスというと、サハリン沖の開発が実施段階に入り、日本へもLNGとして輸入される契約がされたと聞いています。そのほかに、どのような動きがあるのでしょうか。
(中村) ロシア東部のシベリア、極東には大きく分けて、クラスノヤルスク、イルクーツク、ヤクーツク、サハリンの4つのガス生産地域があります。そのうちサハリンは商業生産が始まったわけですが、そのほかの地域はまだこれから開発を待っている状況です。こうした状況ですから、ロシア東部では、ガスの利用についてもほとんど行われていません。ロシアは、単に天然ガスを生産し、輸出しようと考えているわけではなく、天然ガスを化学的に応用し、周辺産業を育て、地域の経済活性化に結びつけることを考えています。さらに、そうしたガス化学製品をアジア太平洋地域へ輸出し、北東アジアのエネルギー安全保障や環境問題の改善にも貢献しようと構想しています。そのため、日本などへも資金協力や技術協力を呼び掛けているところです。
Q: 資源開発という大きなプロジェクトであり、大きな資金がからむ問題ですから、慎重に考えなくてはならないことも多いと思います。そうしたことから、今回のフォーラムで注目すべき発言はどんなことがあったのでしょうか。
(中村) まずロシア側の基調報告として、ロシアのガス開発全体のコーディネーター役ともいえるガスプロム社の副社長相談役であるアレクセイ・マステパノフ氏から、先ほど申し上げたようなロシア東部のガス計画について報告がありました。日本側からは、国際協力銀行理事の野崎茂氏が基調報告し、昨年11月のプーチン大統領来日時に交わされたエネルギー分野における長期協力の基本的方向性に関する合意がなされたこと、日ロ協力には世界的な意義があること、さらに開発の地元への還元、環境問題の視点などの重要性が指摘されました。日本エネルギー経済研究所常任理事の兼清賢介氏は、エネルギー価格が高騰している中で、天然ガスの需要・供給バランスの見通しをどう見出していくのか、エネルギー開発のスケールメリットをどのように付けていくのか、という課題が提起されました。フォーラムではさらに、クリーン燃料として注目されるDME=ジメチルエーテル=、ガスを液化して利用するGTLなどの技術をロシア側に紹介するなどの現実的な情報交換も行い、またトピックとして、太平洋石油パイプラインの最新動向や、ロシア極東からの電力輸出構想も取り上げました。ERINAとしては、兼清氏が問題提起した需給バランス、スケールメリットなどの課題に対応するためにも、日ロ間だけでなく、中国などを含めた北東アジア全体での対話の場を引き続き設けていきたいと考えているところです。
Q: 新潟という地方都市でこうしたフォーラムが行われるということも大変興味深いことです。その辺の事情や狙いと言ったものを教えてください。
(中村) 新潟は日本海をはさんでロシア東部に面し、旧ソ連時代から交流を続けています。エネルギーの面でも、古代から日本では希少な石油やガスを産出し、現在もLNGを利用した高効率火力発電やDMEを日本で最初に商業生産するなど、日本を代表するエネルギー拠点ともいえる地域です。日ロエネルギー協力が地方にどう還元されるのか、今回のフォーラムはその可能性を地方自身が探る場でもあったわけです。
Q: なるほど、グローバルの時代、地方の時代を感じさせるフォーラム、というわけですね。今朝はありがとうございました。