「2008北東アジア経済発展国際会議イン新潟」からの提言

NHKラジオ第一放送「ラジオあさいちばん」
 放送

MC: 1月21日から22日、新潟市で「2008北東アジア経済発展国際会議」が開かれました。成長が続く中国やロシア、2008年に入って新しい国際環境が予感される朝鮮半島情勢など、北東アジアは大きな注目を集めています。この北東アジアで経済連携を深め、地方レベルからさまざまな政策を提言しようという国際会議が、今回17回目を迎えた「北東アジア経済会議」です。今朝は、この会議の事務局を務めたERINA=環日本海経済研究所・調査研究部長の中村さんに、会議の成果を伺います。

中村さん、まずこの会議の特徴というと、どんなことになるのでしょうか。

(中村) 北東アジア経済会議は、東西冷戦が終わる1990年から始まり、当時から環日本海交流の時代の窓口として、新潟市で開催されてきました。これまでの会議では特に、北東アジア各国をつなぐ輸送問題や、世界的に注目されるエネルギー問題などに成果をあげてきました。
輸送問題については、北東アジアからユーラシア、欧州へとつながる9本の「北東アジア輸送回廊」を提案し、現在、国連アジア太平洋経済社会委員会=ESCAPなどでもその整備が図られているところです。エネルギー問題では、エネルギー輸出国のロシアとエネルギー輸入国の日本、中国、韓国などが連携して地域のエネルギー安全保障に取り組むべきだとする「北東アジアエネルギー共同体」の構想を示してきました。
MC: 今回の会議では、どんなことがテーマになったのでしょうか。
(中村) 今回は、「北東アジアとFTA」、「食料安全保障」、そして「エネルギー・環境」という3つの分科会で、議論を行いました。

東アジアというのは、EU=欧州やNAFTA=北米とともに、世界の大きな経済圏となっていますが、政治的にも経済的にも直接的な影響力を持つロシアを含めたアジア太平洋、あるいは北東アジアという経済圏も同時に重要だと、私たちは考えています。FTAという問題では、韓国と米国のFTA合意が、日中韓3カ国のFTA締結に向けて大きなインパクトを与えました。このインパクトを北東アジア経済圏にどう生かしていくか、慶応義塾大学の木村福成教授を中心として、日中韓と米国の専門家を交え、実際的な議論が行われました。

MC: 二つ目の「食料安全保障」というのは、どういう内容だったのでしょうか。
(中村) 地球規模の食料需給バランスが21世紀の大きな課題とされる中で、食料大国・中国の国内でも食料需給バランスをとることが難しくなってきています。こうした状況の中で、北東アジア各国・地域が連携することで、グローバルとナショナルの両面で食料安全保障に貢献し、また、農業や食品加工などローカルな産業振興にも貢献するのではないかと考え、今回の会議で初めて分科会として取り上げました。
MC: 中村さん自身が分科会のコーディネーターをされましたね。
(中村) はい、食料問題というのは、実は北東アジア交流の原点でもあるのです。日中交流が始まったばかりの1979年、新潟市の亀田郷土地改良区で理事長をされていた佐野藤三郎さんが、当時の中国の王震副首相から、中国・黒龍江省の三江平原の開発を依頼され、このことが次第に発展して、環日本海交流、北東アジア交流に広がってきました。

私たちはこの原点も踏まえ、これからは国際的な「食料クラスターの形成」をキーワードに、食料安全保障の問題を続けていこうと考えています。

MC: エネルギー問題では、環境問題も同時に議論されたのですね。
(中村) はい。エネルギー問題と環境問題は互いに密接な関係にあります。特に、2013年以降の「ポスト京都議定書」時代を見据えれば、ロシアや中国などへの省エネ技術の移転や、そのための専門家の育成などを、北東アジア全体として取り組まなくてはなりません。そのためには、ロシアや中国、もちろん日本でも、中央と地方が密接な連携体制をとって進めていくことが必要になります。

エネルギー・環境分科会では、ロシア東シベリアなどで進むエネルギー開発の近況を含め、この21世紀の課題ともいえる議論について、東京大学大学院の客員教授である鈴木達治郎さんを中心に進めました。

MC: 最後に、会議全体を通じた感想を中村さんなりにまとめると、どういうことになるでしょうか。
(中村) 会議の基調講演をされた中央大学教授の猪口孝さんのテーマは「再び北東アジアを考える」でした。冷戦終焉とともに、北東アジアは「緊張の海から平和の海へ」という日本海をシンボルに注目され、ロシアの経済的混乱などによる停滞期を経て、いま再びクローズアップされています。今年は、日本海からロシアへ向かうフェリー航路も開設されようとしています。刻一刻と情勢が変化する中国、ロシア、朝鮮半島を目の前にした新潟の人間として、日本の北東アジア政策が遅れ、地方都市が国際的な協力体制から取り残されていくことがないよう、こうした会議を通じて新しい北東アジアを発信していきたいと考えています。
MC: ありがとうございました。