歴史を見つめるレーニン像

ソビエト連邦指導者レーニンの銅像が市民によって取り壊される光景をテレビで見たことがある方は多いと思います。ソ連崩壊の象徴のように放送されることが多かったようですが、レーニン像は今もまだロシア各地に残っています。「歴史の一部として残す」と言う表向きの理由と、「撤去費用が捻出できない」と言う裏事情があるようですが、近年では、頭にかつらが置かれたり、落書きされたりと、悪戯の対象となってしまうこともしばしば。最近、ロシアではレーニンを知らない若者も増えているようです。

5月9日の対独戦勝記念日直後のハバロフスクのレーニン像はなんとロシアの国旗に囲まれていました。更にこの三色旗は、ソ連がドイツに勝った証しでもある黄色と黒の縞模様の「ゲオルギー・リボン」で飾られています。

ソ連の国章が刻まれた土台の上でロシアの国旗に囲まれているレーニン像はなんとも不思議ですが、歴史に翻弄されてきたロシア人が、アイデンティティを模索しながらも折衷主義に身をゆだねることにした意思表示かもしれません。

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トッときガイド 2010年 7・8月号
「隣国情緒 北東アジアレポート」No.40