中国・瀋陽で話題の「栓良精神」
遼寧省の省都・瀋陽市は、中国東北地方の中心都市。工業が盛んで、その分、街の空気が汚れているのが気がかりです。のんびり釣り糸を垂れている風景も、心なしか白く濁っています。これではいけない、と中国ではいま、経済成長と同時に環境対策にも真剣に取り組んでいます。硬軟あわせ持つ中国の人たちの最近の気持ちを物語るエピソードの一つが「栓良精神」です。
瀋陽市の幹線道路のひとつ、泰山路と黄河南大街の交差点が、交通巡査・李栓良さんの勤務地でした。街路からあふれ出るくらいに増えたクルマの流れを李巡査が交通整理すると、不思議に渋滞が起こらない、と評判でした。けれど、李巡査が話題になったのはこのことだけではありません。巡査をしながら、その給料でこの十数年、50人以上の学生に延べ5万元以上の学資援助をしてきたのです。
李栓良さんは今年8月、40年勤めた職を退官しました。李さんの志は「栓良精神」として瀋陽の人々の記憶に残り、李さんが立っていた交差点は「李栓良」交差点と名付けられました。
ERINA(環日本海経済研究所)
調査研究部長 中村俊彦
トッときガイド
2010年 11・12月号
「隣国情緒 北東アジアレポート」No.42